JIS製図の幾何公差について一から解説。幾何公差のうち、姿勢公差に含まれる「傾斜度」について取り上げる。
傾き具合のずれを管理する(2):機械製図道場(中級編10)
2025.09.03
今回の記事は…
(執筆:土橋美博/スワニーCIO、3D CAD推進者)
前回に引き続き「傾斜度」について解説します。
今回は、「直線形体のデータム平面に対する傾斜度」と「平面形体のデータム直線またはデータム平面に対する傾斜度」について解説します。
2.直線形体のデータム平面に対する傾斜度
【公差域の定義】(JIS原文、以下同様)
直線形体のデータム平面に対する傾斜度は、直線形体(L)の両端を含みデータム平面(PD)に垂直な幾何学的平面(PA)に垂直で、データム平面(PD)に対して理論的に正確な角度(a)をなす幾何学的平行2平面で直線形体(L)を挟んだ時の、2平面の間隔(f)で表す。

図1 直線形体のデータム平面に対する傾斜度
【口語訳】(筆者解釈)
直線形体が基準となる平面に対してどれくらい傾いているかを示す方法です。
具体的には、その直線の両端を含むように、基準の平面に対して直角に立てた仮想の平面を考えます。そこに、基準の平面に対して理想的に決められた角度で2枚の平行な平面を引き、その2枚の平行平面の間に直線を挟み込みます。このときの2枚の平行平面の間隔が、傾斜度として表されます。
3. 平面形体のデータム直線またはデータム平面に対する傾斜度
【公差域の定義】
平面形体のデータム直線またはデータム平面に対する傾斜度は、データム直線(LD)またはデータム平面(PD)に対して理論的に正確な角度(a)をなす幾何学的平行2平面で平面形体(P)を挟んだとき、平行2平面の間隔が最小となる場合の2平面の間隔(f)で表す。

図2.平面形体のデータム直線またはデータム平面に対する傾斜度
【口語訳】
平面が基準となる直線や平面に対してどれくらい傾いているかを表す方法です。基準となる直線に対して、あらかじめ決められた理想の角度で2枚の平行な面を作り、その2枚の面で測りたい平面を挟み込みます。そのとき、平行な2枚の面どうしの間隔がいちばん小さくなるようにしたときの幅を”傾斜度f”として表します。
・理論的に正確な寸法とは
さて、今回、「理論的に正確な寸法」という用語が登場しましたが、これは何か、解説します。内容がありました。これはどのような定義なのでしょうか。
「JIS B0021:1998 製品の幾何特性仕様(GPS)-幾何公差表示方式-形状、姿勢、位置及び振れの公差表示方式」を確認すると、以下のような理論的に正確な寸法に関する解説があります。
【定義】
理論的に正確な寸法
位置度、輪郭度または傾斜度の公差を一つの形体またはグループ形体に指定する場合、それぞれ理論的に正確な位置、姿勢または輪郭を決める寸法(距離を含む)を理論的に正確な寸法という。理論的に正確な寸法は、データム系の相対的な姿勢の決定に指示する寸法にも用いる。理論的に正確な寸法は、公差を付けず、長方形の枠で囲んで示す。
理論的に正確な寸法とは何でしょうか?
読者の皆さんは、図面で「□で囲まれた寸法値」が書かれているのを見たことがあるでしょうか(図3)。これが 理論的に正確な寸法(基本寸法) と呼ばれるもので、通常の寸法とは意味が少し違います。

図3 理論的に正確な寸法の例
① 普通の寸法との違い
普通の寸法は ±の許容差(公差) が付いていて、「この範囲ならOK」という許容幅を示します。一方、理論的に正確な寸法は 公差を持たず、図面上での「理想的な基準の値」を示します。つまり、実際に加工された部品がこの寸法通りになることを要求しているわけではなく、「幾何公差(位置度・輪郭度・傾斜度など)の基準となる、ブレのない値」を与えているのです。
② どうやって表すのか?
寸法値を 長方形の枠(□)で囲んで 表示します。例えば「穴の中心が基準面から30mm離れている」と指示したい場合、普通の「30」ではなく「□30」と書きます。こうすることで、穴の位置度を決める「基準座標」が明確に定義されます。
③ なぜ必要なのか?
もし「□」を付けずに普通の寸法として書いてしまうと、そこに ±公差 が自動的に適用されてしまいます。すると「穴の位置度」を指定しているはずなのに、その基準となる位置があいまいになり、幾何公差の指示と矛盾が生じます。
④ まとめると
・□で囲んだ寸法値 → 理想的な寸法(ブレなし)=幾何公差の基準
・□なし寸法値 → 実際の加工で許容される寸法(±公差付き)
実際の図面で傾斜度はどう使われるか
傾斜度について、具体的な図面を描いてみました(図4)。

図4 傾斜度の例(ZW3Dで作成)

図5 図4の図面の3Dモデル(ZW3Dで作成)
この図面のブロックの下面をデータムとし、穴の中心線がデータムに対して理論的に正しい120度の0.05mm離れた平行2平面の中にあるとすることを規定しています。
次回は「輪郭度」について解説をします。
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。

