射出成形実務にかかわる、経験数年程度~中堅技術者の方向けに、成形不良対策に関する解説をお届けします。今回は、成形時における結晶性プラスチックの結晶特性について。
樹脂の成形特性(1) 1.2 結晶性プラスチックの結晶特性:射出成形技術者向け! 成形不良対策塾【中・上級編】(2)
2025.09.29
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
前回は、成形時における非晶性プラスチックと結晶性プラスチックの融解・固化について解説した。今回は、成形時における結晶性プラスチックの結晶特性について解説する。
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成形時における結晶性プラスチックの結晶特性
図1に結晶性プラスチックの溶融形態と結晶形態を示す(注1)。

図1 結晶性プラスチックの溶解形態と結晶形態(注1)
溶融ポリマーはランダム配列であり、絡み合いも多数形成している。冷却過程で結晶化するときにはポリマーは絡み合い点をすり抜けて結晶化することはできず、ポリマー全体としてはほとんど動かずに部分的に結晶化が進む。
その際、絡み合い点は結晶内には入ることができないので、結晶表面に押し出されて非晶相を形成する。結晶相を構成する球晶は螺旋転移によって生じた多層ラメラが中心となって発達する。
結晶の成長には結晶核の生成と球晶の成長が関係する。そのため結晶化速度は核生成速度と球晶成長速度に依存する。球晶成長速度は高温側で速く低温側で遅い、逆に核生成速度は高温側で遅く低温側で速い。
そのため、図2に示すように冷却過程において結晶化速度が最も速くなる温度域が存在する。そのピークが結晶化温度である。
また、結晶化には冷却速度が関係する。冷却速度が速いと結晶化が十分に進行しないうちに固化するので結晶化度が低くなる。射出成形では金型温度が高いと冷却速度は遅いので結晶化度が高くなるが、逆に低いと冷却速度は速いので結晶化度は低くなる。

図2 結晶成長速度の概念図(注2)
射出成形では、型内で冷却されるときに型壁面と接する表面層は急冷されるので、結晶化が進まず非晶相となる。図3はポリアセタール(POM)射出成形品断面の結晶状態を偏光顕微鏡で観察したものである(注3)。

図3 POM成形品の断面結晶構造(注3):金型温度80℃、偏光顕微鏡400倍
同図のように表皮層は型壁面から急冷されるので非晶相となり、その下層は粗い球晶であるトランスクリスタル層が存在する。さらに、中心部のコア層には高度に結晶化した球晶層が存在する。
引用文献
- 高強度高分子材料調査研究委員会編、高強度高分子材料に関する調査研究報告書、p.103(1987)
- 本間精一著、プラスチック材料大全、p.31、日刊工業新聞社(2015)
- 本間精一著、材料特性を活かした射出成形技術、p.79、シグマ出版(2000)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

