“補助金コンサル”ではなく、あくまで“経営コンサル”から見た補助金活用のあり方について、数百社もの経営コンサルや補助金サポートをしてきたエキスパートが語ります。
補助金を活用するメリットと賃上げのバランス:補助金を活用した経営改善のススメ(2)
2025.11.17
この記事では…
(執筆:小島雅史/富山ビジネスマネジメント)
前回、設備投資において活用できる主要な補助金を4つ提示した。
省エネ補助金だけは、この中での毛色が違うので除外するが、他の3つの補助金には、申請要件として、付加価値額(生産性)や賃上げが必須となっている。
今年度からの補助金は、とにかくこの賃上げ要件の縛りが強く、「目標未達成ならば補助金返還」と強くうたっていることに注意が必要だ。

設備投資後の労働生産性を見誤るな!
経営コンサルとして言いたいことは、何かしらの設備投資を行うことで、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を従業員で割った1人当たりの生産性がどれくらいになるかをあらかじめシミュレーションしておかないと後々とんでもないことになると警鐘を鳴らしたい。
例えば、事業計画5年間で、毎年3.5%の賃上げを全従業員に行った場合、5年間で複利で 18.7%の賃上げが必要となる。仮に 20 人従業員いて、一人当たり給与支給総額500万円とすると、全員で1億円となり、賃上げ上昇額は1870万円の増加となる。
補助金が 1500 万円とした場合、5年間で補助金額より、賃上げ額が上回ることになる。 もちろん、設備投資をして生産性が高まれば、利益も多く出る予測なので、賃上げ額が設備投資額を上回って問題ない。
ただし、中小企業のように毎年、大企業や経済や市場の動向で、売上が乱高下しがちな中で、果たしてこのような経営が成り立つのか?ということである。
賃金は原則、引き下げることは難しい。補助金ありきで、賃上げしたものの、売上が低迷し、利益もなくなり、人件費という固定費のみが維持されれば、経営は行きつかなくなるのは見えている。
改めて、必要な設備投資と賃上げ要件のバランスをしっかりシミュレーションすることが求められる。
補助金をもらえる額、賃上げしなければいけない額、経営財務上の最低人件費の額、そして損益分岐点売上額、労働分配率など、あらゆる方向から、予測したうえで、設備投資を行うこと期待したい。
決して、賃上げ要件は、ないがしろにされるべきものではない。数年後に必ずと言っていいほど、企業経営に重くのしかかるものと考えるからである。
ただし、自社にとってこれまでの旧モデルの設備の更新ではなく、まったく新しい機能を持った設備への投資であれば、この限りではない。新しい機能を持つマシンということは、自社にとって新しい付加価値を生み出す可能性があるということでもある。新しい市場、新しいお客様、新しい製品といったものが創造できる可能性につながる。これは企業経営にとって大切なことであり、この意欲、意識はぜひ持ってもらいたいものである。
一方、自社がこれまで持っていない機能ということは、どれくらいの成果や効果が生み出されるか読めないともいえる。その分、投資にも慎重になるが、補助金を獲得、活用してチャレンジするということでは補助金制度の目的にもかなっているといえる。
補助金が採択されたら設備を購入するということ
「補助金が採択されたら設備を購入する」という声は、実際、多く聞こえてくる。筆者の肌感覚として、半分くらいはそういうスタンスの企業が多い。確かに設備投資は中小企業では高額な買い物であり、上述したように故障するまで使用する、減価償却期間が 7~10年が多い製造業のマシンでも、15年以上使用している企業もたくさんある。
本来は、経営財務上の内部留保の資金から、設備投資計画を立案し、計画的に設備を更新、修繕していくのが筋である。そこに補助金の申請期間がマッチすればベストである。
補助金が出るまで設備投資を待とうとする姿勢は、分からなくはないが、1年も2年も採択されず、更新できていないというのは、経営上において、本当に必要な設備なのかどうかをいったん整理してみてほしい。
この2年間という期間、企業経営で、「本来は取り組むべきことに、取り組んでいない」という機会損失を起こしていることは間違いない。あくまでも設備投資の補助金は、事業推進する上での費用面の補助であり、主体ではないことを再確認したい。(次回へ続く)
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プロフィール

小島雅史
1973 年生まれ。株式会社富山ビジネスマネジメント代表取締役社長。
本業の中小企業の経営者を対象とした伴走型経営コンサルティング業務を展開しながら、その一環として、単なる補助金獲得支援サービスではなく、企業経営の強化、成長を主目的とした補助金申請サポートを行っている。
これまで 500 社以上の経営コンサル、300 社以上の補助金サポートの実績あり。 https://www.tbm-g.net/

PlaBase編集部
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