JIS製図の幾何公差について一から解説。今回は「位置公差」について説明する。
位置公差と位置度:機械製図道場(中級編13)
2025.12.03
今回の記事は…
(執筆:土橋美博/スワニーCIO、3D CAD推進者)
今回は、位置公差に分類される「位置度」について解説します。解説に入る前に、「位置公差」について少し確認していきます。
前回、輪郭度の説明の中で、「輪郭度」は、製品の“形”をどこまで理想に近づけるかという、設計者のこだわりを数値で表現するための重要な要素でした。しかし、形状の正確さだけでは、製品としての「組み合わせ」や「位置関係」は保証できないということでしたね。
輪郭度(面の輪郭度・線の輪郭度)は、理論的に決めた理想の輪郭(=基準形状)に対して、「実際の形状がどれだけズレても良いのか」を許容する公差になります。この「理想の輪郭に対してのズレ」は、幾何公差の分類上、「位置のズレ」、つまり位置公差として扱われています。
輪郭度は形状公差ではないのか?
JISでは、幾何公差を以下のように大きく次の4群に分類しています。
・形体の形状公差(真円度・平面度など)
・姿勢公差(平行度・直角度など)
・位置公差(位置度・同軸度・対称度・輪郭度)
・振れ公差(全振れ・円振れなど)
この分類から、輪郭度は位置公差になります。
輪郭度は「形状の狂いを見るんだから、形状公差では?」と思われがちですが、形状公差と位置公差には違いがあります。
形状公差
・単一の形体(1つの面や線)だけを対象とする
・データム(基準)とは関係しない
・例:平面度、真円度、円筒度など
→ 基準がなく、単体そのものの“形の良さ”を見る公差
輪郭度(線/面の輪郭度)
・理論的に正確な寸法(TED)で定められた“理想形状” を基準にする
・データムを使う場合もあり、複雑形状も一括管理できる
・結果として 理想形状に対する「位置のズレ」を評価する公差
→「どれだけズレてもよいか」を定める点で 位置公差に分類される
つまり、輪郭度は形状そのものが理想的かではなくて、理想的な形状に対する位置的なずれを評価するため、位置公差として扱われるのです。
位置度とは?
それでは、ここから「位置度」について解説していきます。
位置度
【位置度の意味】(JIS B 0621-1984 幾何偏差の定義及び表示 JIS原文)
位置度とは,データム又は他の形体に関連して定められた理論的に正確な位置からの点,直線形体又は平面形体の狂いの大きさをいう。
【口語訳】(筆者解釈)
位置度とは、「本来あるべき正しい位置」から、点・線・面がどれだけズレているかを示すものです。
この“正しい位置”は、データム(基準)や他の形状を基準にして決められます。
位置度の意味にある「理論的に正確な位置」ですが、前回「輪郭度」で説明した「理論的に正確な寸法(TED)」によって与えられる位置であると筆者は解釈しています。
筆者もこの「位置」は以下のように解釈しています。
項目 | サイズ(寸法) | 位置 |
意味 | 大きさ・幅・径など | どこにあるか(基準からの場所) |
評価対象 | 形状そのもの | 形状の中心・軸・面の所在 |
公差 | 寸法公差(±0.1など) | 幾何公差(位置度・平行度・真直度 etc.) |
表記 | 寸法値またはTED(□寸法) | データムと幾何公差枠で評価 |
関連 | 部品そのものの大きさを決める | 組立・機能のための位置関係を決める |
表1 位置度の評価
位置度にはいくつかの種類があります。
- 位置度は、評価対象の点
- 直線形体(軸やエッジなど)
- 平面形体が、理論的に正しい位置に対して どのくらいの範囲に収まるか
例えば図面では、「位置度 0.1 mm」や「位置度 0.02 mm」といった表記を使い、“この範囲の中に位置のズレが入っていること”
を意味します。
これから、この3種類の位置度について説明していきます。
点の位置度
【公差域の定義】(JIS B 0621:1984 幾何偏差の定義及び表示 JIS原文、以下同様)
点の位置度は、理論的に正確な位置にある点(ET)を中心とし、対象としている点(E)を通る幾何学的円または幾何学的球の直径(f)で表す。
【口語訳】
点の位置度は「本来あるべき位置(理想の点)」を中心にして丸(2D)や球(3D)を描いたとき、
その丸(または球)の大きさで“どれだけズレているか”を表すものです。

点の位置度 公差域の定義

点の位置度の具体例(ZW3Dで作成)
【図面の点の位置度解釈】 Φ10H7の穴の中心点は直径0.01mmの円の中にあることを定義
次回も、位置度の解説となります。(次回へ続く)
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。
