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最大実体公差を用いたはめあい設計(中級編16)

2026.04.01

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この記事では…

JIS製図の幾何公差について一から解説。今回は最大実体公差方式について説明をします。

(執筆:土橋美博/スワニーCIO、3D CAD推進者)



前回より最大実体公差について説明を始めました。今回は最大実体公差による穴と軸のはめあいについて説明をします。


⁠前回の振り返り

穴・軸ともに位置度公差が与えられている場合、中心位置のばらつきにより実際の外形は理想円からずれた範囲を持ちます。

このとき重要なのは、単なる寸法(サイズ)ではなく、位置ばらつきを含めた「実際に占有する領域」です。

  • 穴の場合
     最大実体サイズでも、位置ばらつきを考慮すると実効的に小さくなり、その限界が「最大実体実効サイズ」となる
  • 軸の場合
     最大実体サイズでも、位置ばらつきを考慮すると実効的に大きくなり、その限界が「最大実体実効サイズ」となる



⁠つまり、位置公差を含めて考えると、サイズ公差によって管理されるサイズではなく、「機能を管理するための実効的な境界(最大実体実効サイズ)が存在する」ということが言えます。

【サイズ公差とは】
⁠部品の大きさ(寸法)に許されるばらつきの範囲を示すものです。
例えば「φ12 ±0.05」と指示されている場合、実際の寸法は11.95~12.05の範囲で変動することが許容されます。このばらつきは、加工誤差や測定誤差など現実の製造において避けられないものであり、設計者はこの範囲内であれば機能を満足すると判断して寸法を決めています。

⁠しかし重要なのは、サイズ公差は「大きさ」しか規定していないという点です。筆者も、穴や軸の中心間ピッチを「中心距離寸法に対して与えた ±公差」と、このサイズ公差を用いて管理してきました。


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図1 サイズ公差と中心距離寸法に対して与えた公差により指示した図面


⁠これは幾何公差の位置度ではなく、

  • 線寸法公差
  • 中心距離寸法公差
  • ピッチ寸法公差

として扱っていたものです。

⁠穴や軸の位置を「真の位置」に対して管理するのではなく、穴中心どうしの距離、あるいは基準からの距離寸法のばらつきとして管理していたということです。

位置度との違いはどうでしょうか。ここが重要です。寸法公差での管理は中心間距離が指定値の範囲内ならよい、という考え方です。

⁠ただし、実際には、

  • X方向には合っている
  • Y方向にはずれている
  • 各穴の位置が斜めにずれている

といった状態でも、個別寸法が入っていれば許容されることがあります。

⁠一方、位置度での管理は、真の理論位置に対して、穴や軸の中心が円筒公差域の中に入るかで管理します。そのため、実際のはめあいや組立性に対して、より機能的な管理ができます。「なぜ中心間距離の公差ではなく、位置度による管理を考えるのか」を、穴と軸のはめあいを例に進めましょう。



⁠⁠設計者は、次のように考えて軸のある部品と穴のある部品の組み立てができることを考えています。

  • 部品Aの軸の中心間距離、部品Bの穴の中心間距離が、最悪の組み合わせになっても、組み立て可能としたい
  • 部品Aと部品Bのそれぞれの上/下の許容サイズにおいて、軸径が最大値、穴径が最小値になっても、組み立て可能としたい


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図2 穴部品Aと軸部品Bの組み立て


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図3 穴部品A 穴の中心の位置度と穴のサイズ公差(ZW3Dで作成)


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図4 軸部品B軸の中心の位置度と穴のサイズ公差(ZW3Dで作成)




図5は、穴と軸が最大実体サイズの場合で、穴の中心距離が最小、軸の中心距離が最大となる場合を示しています。

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図5 軸部品と穴部品は最大実体サイズ(ZW3Dで作成)


⁠このとき、以下のようになります。

  • 穴の外側最大サイズ
    ⁠(穴の中心距離最小値)19.9mm+(穴の最大実体サイズ)12.1mm=(穴の外側最大サイズ)32.0mm
  • 軸の外側最大サイズ
    ⁠(軸の中心距離最大値)20.1mm+(軸の最大実体サイズ)11.9mm=(軸の外側最大サイズ)32.0mmとなります。


⁠これは、軸と穴の関係を見たとき、その外側最大の位置では「ガタ」はないものの、軸は穴に“はめる”ことができる状態であることを示しています。



図6は、穴と軸が最小実体サイズの場合で、穴の中心間距離が最大、軸の中心距離が最小となる場合を示しています。先ほどと同様に、軸と穴の関係を見ると以下のようになります。


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図6 軸部品と穴部品は最小実体サイズ(ZW3Dで作成)


  • 穴の外側最大サイズ
    ⁠(穴の中心距離最大値)20.1mm+(穴の最小実体サイズ)12.2mm=(穴の外側最大サイズ)32.3mm
  • 軸の外側最大サイズ
    ⁠(軸の中心距離最小値)19.9mm+(軸の最小実体サイズ)11.8mm=(軸の外側最大サイズ)31.7mm


⁠これは、軸と穴の関係を見たとき、その外側最大の位置では、32.3mm-31.7mm=0.6mmとなり、双方の穴と軸に0.3mmの「ガタ」が生じていることを示し、

軸は穴に“はめる”ことができる状態です。


⁠最小実体サイズに注目したとき、この「ガタ」を詰めても「はめ合い」の機能には問題は生じません。

つまり、このガタには「マージン」があるともいえます。

そこで、軸と穴を規定する位置度公差に注目し、このマージンを公差域に対して加味して考える設計方法のことを、「最大実体公差方式」といいます。



⁠次回は、この最大実体公差方式により、最小実体サイズの見直しを行います。(次回に続く)





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土橋 美博(どばし・よしひろ)

⁠3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。