プラスチック成形時に関係する熱的性質について解説する。
樹脂の成形特性(1) 1.8 プラスチックの熱的性質:射出成形技術者向け!成形不良対策塾 中・上級編(8)
2026.05.18
この記事は...
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
射出成形に関係する熱的性質には比熱、熱伝導率、熱拡散係数がある。各種プラスチックと鋼の熱的性質を表1に示す。
表1 プラスチックと鋼の熱的特性

プラスチックの比熱は1.0~2.3(kJ/kg℃)であり、鋼と比較して2~5倍大きな値である。従って、プラスチックは温めにくく、冷めにくい材料である。そのため加熱・溶融するときには大きな熱量を要する。
例えば、非晶性プラスチックを成形温度まで加熱するに要する熱量は次式で表される。

プラスチックの比熱は温度が高くなると若干大きな値になるため、式(1)の比熱は平均比熱としている。
一方、結晶性プラスチックは比熱に基づく熱量に加え、融点で結晶融解熱を吸収するため、次式で表される。

結晶融解熱を表2に示す。
表2 結晶性プラスチックの融解熱と融点

プラスチックの熱伝導率は鋼の約1/300から1/200の値である。プラスチックの熱伝導率が小さいため、実用的には次の利点と注意点がある。
①成形時には冷却に時間を要する。
②発熱体を内蔵するハウジングに使用すると、内部温度が上昇しやすい。
③容器類では内容物が冷えにくい。
熱拡散係数は物性値ではなく熱拡散方程式の係数である。表1に示したようにプラスチックの熱拡散率は0.6×10^-7~1.9×10^-7 m^2/sec程度の値である。熱拡散係数が小さいほど熱拡散しにくい、言い換えれば熱移動しにくいことを表す。プラスチックの熱拡散係数は鋼の約1/10であるので成形時の冷却に時間を要することになる。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

