PlaBase

樹脂の成形特性(1) 1.9 冷却時間:射出成形技術者向け! 成形不良対策塾 中・上級編(9)

2026.06.22

Image

この記事は...

プラスチック成形時おける冷却時間について解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

>>前回の記事


成形サイクルに占める冷却時間の比率は大きいので、サイクルタイムを短縮するには冷却時間を短くする必要がある。冷却時間に影響する要因について述べる。 

 

キャビティに射出された溶融樹脂の熱は金型に熱移動することで樹脂温度は低下し、やがて固化する。成形サイクルにおける冷却時間は保圧時間終了後に型開きするまでの時間である。しかし、保圧過程においても冷却は進行しているので、ここでは保圧時間と冷却時間の和を冷却時間とする。 

 

冷却時間計算式は式を解くときの前提条件によって係数の異なる式が公表されているが、その1つを次式に示す(注1)。 

Image

式1をもとに、冷却時間に関係する諸要因について考えてみる。 

成形品厚みhについては、冷却時間tは厚みhの2乗に比例する。つまり、厚みを2分の1に薄肉化すると冷却時間は4分の1に短くなる。成形サイクルを短縮するには薄肉化することが最も効果的であることが分かる。 

 

式1に示すように金型温度TWも冷却時間に影響する。式1の離型可能温度TDは固化するときの温度である。非晶性プラスチックはガラス転移温度、結晶性プラスチックは結晶化終了温度が指標になる。 

 

非晶性プラスチックであるポリカーボネート(PC)と結晶性プラスチックであるポリアセタール(POM)について金型温度を変えたときの冷却時間を試算してみる。金型温度を60℃と100℃の2条件について冷却時間を試算した。熱拡散係数は前記事で示したそれぞれの値を用いた。厚み1mmと3mmについて、式1を用いて計算したときの冷却時間を表に示す。 

表 冷却時間の試算例

Image


⁠表に示した試算値は実際にPCやPOMを成形したときの(保圧時間+冷却時間)にほぼ一致している。 

 

これらの試算値から、金型温度が低いほうが冷却時間は短くなることが分かる。ただ、金型温度が低過ぎると残留ひずみが発生すること、後に寸法変化しやすいこと、表面光沢が悪くなること、など品質上の問題が生じる。 

一方、金型温度を高くするとこれらの問題点は解消するが成形サイクルは長くなる。成形サイクルと品質の兼ね合いから最適な金型温度に設定しなければならない。また、実際の成形では離型しにくいと冷却時間を長くしなければならない。そのため冷却時間は抜き勾配、突き出し方式および突き出し位置、保圧条件などにも左右される。 

 

引用文献 

(注1)Tim.A.Osswald,Polymer Processing Fundamentals,p.119,Hanser Gardner Publications 


Image

>>連載「成形不良対策塾 中・上級編」一覧

本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数