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繊維配向にご注意! 繊維強化プラスチックとヒートアンドクール工法:ベテランも陥るプラスチック成形の罠(2)

2026.07.15

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この記事では...

「ベテランであっても陥りやすい落とし穴」をテーマに、現場で起きた不可解な現象を題材として取り上げ、その原因を紐解いていきます。今回は、繊維強化プラスチックを成形する際の繊維配向に関する留意点について解説します。

(執筆:茂木 淳志/PLAMO株式会社 代表取締役 博士(工学))

前回は、PPSのカタログスペックをうのみにし過ぎてしまうことによるトラブルについて解説しました。今回は、繊維強化プラスチックを成形する際の繊維配向に関する留意点について解説します。

繊維強化プラスチックにおける配向の考え方

ガラス繊維(GF)などを添加した繊維強化プラスチックは、プラスチックの強度や剛性を高める材料として、自動車部品をはじめ多くの工業製品に用いられています。

射出成形では、ガラス繊維は樹脂の流動方向(MD方向:Machine Direction)に配向しやすいとされています。設計においても、この前提に基づいてゲート位置を検討し、荷重方向と樹脂の流動方向の関係を考慮することがあります。

一方で、繊維配向は成形条件や製品形状の影響を受けます。条件によっては、製品内部で流動方向とは異なる配向を示したり、TD方向(Transverse Direction)への配向が強くなったりする場合があります。そのため、MD方向への配向を一律に前提とすると、強度不足やソリ変形の要因を見落とす可能性があります。

繊維配向に影響する3要因

ガラス繊維の配向には、金型内で樹脂が流れる際のせん断流動や冷却挙動が関係します。特に、以下の条件では内部の配向状態が変化しやすくなります。

① 肉厚の増加
肉厚が厚い製品では、中心部(コア層)でせん断応力が小さくなりやすく、繊維が流動方向にそろいにくくなる場合があります。

② 金型温度の高温化
金型温度が高いと、金型表面で急冷されて形成されるスキン層が薄くなり、内部の配向状態に影響することがあります。

③ 樹脂温度の高温化
樹脂温度が高いと粘度が低下し、繊維を一定方向に配向させるせん断応力も変化します。その結果、想定した配向状態が得られにくくなる場合があります。

ヒートアンドクール工法では繊維配向にご注意を!

ヒートアンドクール(H&C)工法は、射出時に金型温度を高く保ち、保圧・冷却工程で急速に冷却する成形技術です。ウェルドラインを目立ちにくくしたり、ガラス繊維の表面浮きを抑えたりできるため、外観品質の向上に有効な手法として用いられています。

一方で、射出時に金型温度を高く保つことは、スキン層の形成や繊維配向にも影響します。外観改善を目的とした高温条件が、製品内部の繊維配向を変化させ、設計時に想定した強度や寸法安定性が得られない要因になることがあります。

そのため、H&C工法を適用する際には、外観品質だけでなく、内部の繊維配向や強度特性への影響もあわせて評価することが重要です。

表面ではなく、内部の挙動を確認

外観不良を抑えるための成形条件が、繊維配向などの内部構造に影響することがあります。繊維強化プラスチックを用いた製品では、材料、成形条件、金型構造を個別に見るのではなく、これらが最終的な内部構造や物性にどう影響するかを総合的に評価する視点が求められます。

カタログ物性値やシミュレーション結果を活用する際にも、成形条件や金型内で起きる物理現象を踏まえて判断してみてください。

(次回へ続く)

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茂木 淳志

PLAMO株式会社 代表取締役 博士(工学) 


⁠IMP/IMM工法の開発者 「材料×成形×金型」の総合的知見と現場のリアルなノウハウを武器に、射出成形の限界を突破する技術コンサルタントです。原因不明の成形不良や暗礁に乗り上げた開発案件にこそ、当社の技術が真価を発揮します。