JIS製図の幾何公差について一から解説。今回は、幾何公差と関連して、表面粗さとは何か、なぜそれを図面で指示する必要があるのかを解説します。
表面粗さとは何か:機械製図道場(中級編19)
2026.07.13
この記事では…
(執筆:土橋美博/スワニーCIO、3D CAD推進者)
これまで機械製図道場では、寸法の入れ方、幾何公差、最大実体公差、動的公差線図などについて解説してきました。
図面では、部品の大きさや形だけでなく、穴の位置、面の傾き、軸の振れなど、さまざまな品質情報を表します。ところが、実際の部品品質を考える上では、もうひとつ重要な情報があります。それが、表面粗さです。表面粗さは、図面の中では小さな記号で表されることが多いため、初心者のうちは見落としがちです。
しかし、表面粗さは単なる「見た目のきれいさ」を表すものではありません。摺動、シール、はめあい、摩耗、外観品質など、部品の機能に大きく関わる重要な設計情報です。
今回は、表面粗さについてと、なぜそれを図面で指示する必要があるのかを、初心者にも分かりやすく解説します。
1.表面は完全な平面ではない
機械加工された部品の表面は、一見すると平らに見えます。

機械加工された金属のイメージ
例えば、フライス加工された金属の面や、旋盤で加工された軸の表面を見ると、きれいな平面や円筒面に見えるかもしれません。しかし、その表面を顕微鏡などで拡大して観察すると、細かな山や谷があります。

フライス加工された表面を顕微鏡で見るとこんな感じ(イメージ)
この細かな凹凸が、表面粗さです。つまり、表面粗さとは、部品表面の「つるつる」「ざらざら」の状態を数値で表したものです。
日常生活で例えるなら、ガラスの表面はつるつるしています。一方、紙やすりの表面はざらざらしています。機械部品でも同じように、加工方法や仕上げ方法によって、表面の細かな凹凸の状態が変わります。
ただし、機械製図で扱う表面粗さは、単なる感覚的な「つるつる」「ざらざら」ではありません。
図面では、その表面状態を数値や記号で指定し、製造側や検査側に正しく伝える必要があります。
2.表面粗さは外観だけの話ではない
表面粗さというと、見た目や手触りの話だと思われることがあります。もちろん、外観部品では表面の美しさが重要です。人の手に触れる製品や、見える場所に使われる部品では、表面が粗すぎると品質感が低く見えることがあります。
しかし、機械部品における表面粗さの役割は、それだけではありません。
【 摩擦・摩耗への影響(粗すぎる場合)】
表面が粗すぎると、微小な突起同士が激しく衝突・かみ合うため、摩擦係数が高くなります。これにより突起が削れて凝着摩耗やアブレシブ摩耗を引き起こし、部品の寿命を縮めてしまいます。
凝着摩耗:金属などの2つの物体がこすれ合う際に、接触面の微小な凹凸同士がくっつき(凝着)、その部分が引きちぎられて脱落する現象
アブレシブ摩耗:硬い粒子や相手材の突起が、接触する柔らかい表面を引っかいたり削り取ったりする現象
【滑らかすぎることのデメリット(油膜保持)】
完全に平滑(ツルツル)にしてしまうと、潤滑油が留まるための「微細な隙間(油だまり)」がなくなります。その結果、油膜切れを起こして金属同士が直接接触し、かえって焼き付きや摩耗の原因になります。
【シール面とはめあい面への影響】
シール面:粗いと突起の隙間が通り道になり、漏れ(リーク)の原因になります。
はめあい面・接触面:見かけの接触面積が大きくても、粗い場合は、実際には突起となっている頂点だけで接することになります。これにより局所的に高い圧力がかかり、初期摩耗による「ガタ」の発生や、疲労強度の低下を招きます。
3.表面粗さが関係する代表的な機能
表面粗さが関係する代表的な例を整理すると、次のようになります。

この表から分かるように、表面粗さは多くの機能に関係します。
特に機械設計では、摺動面、シール面、はめあい面、接触面で表面粗さが重要になります。これらの面では、単に寸法が公差内に入っているだけでは不十分な場合があります。例えば、軸の直径が図面通りに加工されていても、表面が粗すぎれば、相手部品との摩擦が大きくなったり、摩耗が早く進んだりすることがあります。
つまり、寸法精度と表面粗さは別の品質特性なのです。(次回へ続く)
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。

