今回より新シリーズ開始。本シリーズでは成形不良とその対策方法について解説する。成形不良が発生しても、品質規格に適合していれば不適合品とはならない。本稿では成形不良に関する前提について解説する。
成形不良と対策1 成形不良に関する序言:射出成形技術者向け! 成形不良対策塾 中・上級編(11)
2026.08.17
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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納入先の品質規格に適合(合格)しないものが、不適合品(不合格品)である。成形不良は不適合品となる可能性がある現象であるが、品質規格に適合すれば不適合品とはならない。製品によって要求品質が異なるので、成形側と受け入れ側の当事者間で事前に取り決めた品質規格に基づいて適合の可否が判定される。
例えば、ウェルドラインは成形不良現象であるが、ウェルドラインが発生しても製品として外観や強度が問題とならない部分に発生している場合には不適合品にはならない。
表1に示すように、成形不良には外観、強度、寸法、成形条件変動に関する項目がある。
表1 成形不良現象

外観不良は激しく発生するものから軽微なものまでさまざまである。実際には事前に取り交わした限度見本を基にして限度を超えたものが不適合品となる。検査は不良現象の発生状況により、全数検査または抜き取り検査で判定される。黒点、ばり不良などは欠点検査機を用いてオンラインで全数自動検査している例もある。
強度不良に関しては、ウェルドラインや気泡(透明品)以外は成形工程で適否を判定することは難しい。試作段階において実用強度との関係から強度不良が生じない成形条件範囲を設定する必要がある。量産段階ではそれらの設定条件に基づいて成形する。実際には強度の品質評価法は確立していない項目が多いので、過去の経験に基づいて判定することが多い。
寸法不良については寸法や形状の測定機器によって計測できるので、品質規格の許容公差を基にして適否を判定できる。ただし、金属材料とは異なりプラスチックは吸湿や温度によって寸法変化すること、弾性率が低いので測定圧によって寸法変化することなどを考慮し、成形側と受け入れ側において同種測定器を用い同一測定条件で判定する必要がある。
また、成形後に寸法が安定化するまでに24~48時間かかるので、後追い検査になる。そのため、試作段階において寸法を計測して指定公差範囲に入る成形条件を設定し、量産では設定条件範囲で成形することが望ましい。寸法検査は抜き取り検査することが多い。
実際に成形条件の調整だけで成形不良(不適合)を解消することは困難なことが多い。成形不良に影響する成形材料、成形品設計、金型設計などの留意点を表2に示す。
表2 成形不良に関する留意点(成形条件以外)

成形現場では生産性を高めることや他の成形不良を対策することが求められるので、1つの成形不良だけに注目して成形条件を調整できないことが多い。試作段階において成形材料、成形品設計、金型設計などを最適化し、量産成形では成形条件が若干変動しても成形不良が発生しないようにロバスト(頑健)設計*することが大切である。
*品質工学では、加工条件がばらついても製品品質ばらつきが少なくなるように設計することをロバスト設計と称している。

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本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
