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局所蓄熱が引き起こす「真空ボイド」と「擬似クラック」:ベテランも陥るプラスチック成形の罠(4)

2026.08.31

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⁠⁠この記事では...

「ベテランであっても陥りやすい落とし穴」をテーマに、現場で起きた不可解な現象を題材として取り上げ、その原因を紐解いていきます。

(執筆:茂木 淳志/PLAMO株式会社 代表取締役 博士(工学))

はじめに:補強のための設計変更が内部欠陥を招く場合

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製品の強度不足や応力集中を改善するために、「肉厚を増す」「コーナーにRを付ける」といった設計変更が行われることがあります。これらは一般的な対策ですが、繊維強化プラスチック(GF強化樹脂など)では、変更した部位が金型内の局所的な蓄熱部位と重なることにより、想定とは異なる結果を招く場合があります。 

前回は、局所蓄熱に伴うガラス繊維のTD配向、すなわち流動方向に対して直角方向への配向について説明しました。局所蓄熱が生じた状態で肉厚を増すと、ヒケやガラス繊維の表出といった外観不良に加え、製品内部に空隙が形成されることがあります。この空隙が繊維配向に沿って広がると、クラックに近い形状の内部欠陥になる可能性があります。 

今回は、局所的な熱の滞留と保圧伝達の不足によって、内部欠陥が形成される過程を解説します。 

1. 局所蓄熱によって「ヒケ」と「ガラス繊維の表出」が生じる理由

 金型の一部に熱がこもり、周囲より高温になっている部位の肉厚を増すと、その部分の樹脂量と熱容量が増加します。結果として、その部位では金型への放熱が進みにくくなり、樹脂の冷却と固化が周囲より遅れます。 

固化が遅れる部位では、周辺が固化した後も体積収縮が続きます。ここで問題になるのが、有効保圧の低下です。 周辺の薄肉部やゲート付近が先に冷えて固まると、成形機から加えられた保圧が、収縮を補いたい厚肉部まで十分に伝わらなくなります。その結果、次のような現象が生じます。 

ヒケの発生:保圧による樹脂の補充が不足し、収縮によって製品表面が内側へ引かれて凹む。 
ガラス繊維の表出:樹脂が金型表面へ十分に押し付けられず、均一なスキン層が形成されにくくなることで、ガラス繊維が表面に現れる。 

これらは外観不良として確認できますが、同時に製品内部でも収縮による空隙が形成されている可能性があります。 

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⁠2. コア層のTD配向と保圧不足による真空ボイド

厚肉部の収縮が表面のヒケとして現れるか、内部の空隙として現れるかは、製品形状や表層部の剛性、冷却状態などによって異なります。 

外側の樹脂が先に固化して形状を維持している場合、中心部の収縮が表面に現れにくくなります。一方、中心部には有効な保圧が届かないため、冷却に伴って収縮する樹脂が周囲へ引かれ、内部に空隙が形成されます。本稿では、このような収縮による内部空隙を「真空ボイド」と呼びます。 

局所的に高温となった厚肉部では、ガラス繊維の配向状態も均一になりません。コア層のガラス繊維がTD方向に配向すると、材料内部の機械的性質に方向性が生じます。そのため、収縮によって形成された空隙が、特定の方向へ伸びやすくなる場合があります。 

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3. ボイドが繊維配向に沿って広がり、クラック状の欠陥に

保圧不足によって生じたボイドは、必ずしも球状になるわけではありません。ガラス繊維の配向や樹脂と繊維の界面状態、収縮応力の方向によっては、空隙が特定方向へ伸びた形状になることがあります。 

この形成過程は、次のように整理できます。 

  • 局所蓄熱と流動状態の影響により、コア層の繊維がTD方向に配向する。 
  • 厚肉部への有効保圧が不足し、中心部に収縮ボイドが生じる。 
  • ボイドが繊維配向や収縮応力の方向に沿って広がり、クラックに近い形状の内部欠陥となる。 

本稿では、このようなクラック状のボイドを「擬似クラック」と呼びます。 

擬似クラックは、製品表面に薄いひび状の模様として現れる場合もあれば、外観からは確認できない場合もあります。内部に残った場合でも、荷重を受けた際の応力集中部となり、製品強度や耐衝撃性を低下させる要因になります。 

補強を目的として肉厚を増やした部位であっても、繊維配向と収縮ボイドの影響が重なると、かえって破壊の起点になる可能性があります。したがって、肉盛りやR付けの効果は、形状だけでなく、冷却状態、保圧伝達、繊維配向を含めて評価する必要があります。 

まとめ:形状変更とともに熱と圧力の伝達を検討する 

ヒケやガラス繊維の表出が発生した際に、射出圧力や樹脂温度などの成形条件を変更しても、十分な改善が得られないことがあります。金型内に局所的な蓄熱部位が残っている場合、その部位では冷却と固化が遅れ、保圧が伝わりにくい状態が続くためです。 

強化樹脂の設計・成形では、形状を付加するだけでなく、次の3点を組み合わせて検討する必要があります。 

  1. 熱の検証 
    肉盛り部を形成する金型構造、特に細いピンやスリットなどに熱がこもらないかを確認する。 

  1. 圧力の検証 
    ゲートから対象部位までの固化過程を踏まえ、必要な時間まで有効な保圧を伝えられる流路が確保されているかを確認する。 

  1. 内部構造の検証 
    繊維配向と収縮ボイドの形成方向を確認し、ボイドが割れの起点となる可能性を評価する。 

材料カタログに記載された強度を実際の成形品で確保するには、製品形状だけでなく、金型内の熱移動、圧力伝達、樹脂流動、繊維配向を含めて検討することが重要です。 

 (次回へ続く)

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>>>>連載「ベテランも陥るプラスチック成形の罠」一覧 

プロフィール

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⁠茂木 淳志/PLAMO株式会社
 代表取締役 博士(工学) 
⁠IMP/IMM工法の開発者 「材料×成形×金型」の総合的知見と現場のリアルなノウハウを武器に、射出成形の限界を突破する技術コンサルタントです。原因不明の成形不良や暗礁に乗り上げた開発案件にこそ、当社の技術が真価を発揮します。

⁠筆者サイト(企業Webサイト):⁠PLAMO株式会社

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