自動車、プラスチック、脱炭素のことならおまかせ! かつてトヨタやサムスンに在籍したコンサルタントである筆者が、自動車技術動向について幅広くお届けします。今回は、中国企業・シャオミのおどろきの技術を取り上げます。
中国スマホ企業シャオミのEVのドアを分解したら驚いた! その2:自動車業界ウオッチ
2026.10.21
この記事について
(執筆:高原忠良/Tech―T)
中国のスマホメーカーが開発販売している画期的なEVをご紹介しています。前回は、シャオミの会社とEV SU7をご紹介しました。
今回は、いよいよドアを分解した結果、特に樹脂分野に関連の深いドアトリムの分析結果のご紹介です。最後に、そこから読み取った、シャオミの開発スタンスを解説します。
日本の自動車・部品業界では、ともすれば「安かろう悪かろう」という先入観で中国EVを見てしまいがちです。しかし今回の分解調査では、その先入観を覆す、緻密で作り込まれたドアトリムの実態が明らかになりました。
Tech-T主催のドア分解調査活動
写真1のようにドア関連の多くの企業様にご参加いただきました。また各社で持ち帰っての詳細な分析調査結果をご提供いただきました。(本報告では、Tech-Tによる分析調査結果のみを掲載しております)会場は名古屋市内・島津製作所名古屋支店の会議室をお借りし、フロントおよびリアのドア現物2枚を前に、参加各社のエンジニアが床に膝を突き合わせて分解・観察を行いました。

【写真1】島津製作所名古屋支店の会議室をお借りしての分解調査会
写真2は調査したドアになります。

【写真2】調査したドア
写真3のように、内張りを外し、スピーカーやドアハンドル機構、配線ハーネスの取り回しまで、実際に手を動かしながら細部を確認していく、まさに“百聞は一見に如かず”の調査会となりました。参加各社からは、「ここまでコストを度外視して質感を作り込めるのは、スマートフォンで培った“売れる商品”への嗅覚があるからではないか」との声も上がりました。

【写真3】ドア2枚(フロント・リア)の外観
調査結果: 豪華で高品質、でもコスト度外視
写真4のように、表皮にはソフトなPAD材を用い高級感のある仕立てを採用し、射出成形部品にも塗装を施すなど、触感と見映えへのこだわりが随所に見られます。中央部にはアルミプレス材によるシックな加飾パネルを配置し、スピーカーグリルもパンチングメタルを採用するなど、量産車としては贅沢な意匠です。写真5右下のように、島津製作所様にご協力いただいたX線透過画像でも、表皮裏の格子状PADパターンやスピーカー開口部の骨格構造が鮮明に確認でき、見えない部分まで作り込まれていることが分かります。

【写真4】ドアトリムの仕様調査結果
写真5左上に一部を拡大して表示していますが、締結方法は、ネジ止めや超音波溶着、熱カシメなど多種の工法が混在し、締結点数も多く、部品点数の多さから二重構造となって重量もかさんでいます。加飾や触感を優先した工法・材料選定が、そのままコストと重量に跳ね返っている格好です。

【写真5】ドアトリムの構造解析結果
われわれ、日本流の設計と加工法で見てみますと、質量で2割程度、コストで3割程度の低減が図れると推定しました。これは、中国EVメーカーに対しての、われわれ日本勢からの訴求点、売込ポイントになる点です。
まとめ: スピードと商品性重視の中国流
ドアAssyはドイツ系企業B社製です。おそらくは開発初期段階からの参画で、ドアの設計開発から製造までを一貫しての発注と推定されます。シャオミとしてはその分のエンジニアをEVの本質開発に投入しています。
既存技術の部分は大胆に協業先サプライヤーにまかせて、EVの本質開発に資源を投入することで、画期的で先進性があるEVを短期間に開発できています。まさに中国流の圧倒的な選択と集中です。
商品性として重要なポイントに重点を置いた結果、市場評価が高く、たった1車種で数十万台、日本でのホンダや日産の総販売台数以上の成果につながっています。
既存領域は大胆に外部委託し、限られた開発資源を差別化領域へ集中投下するこの中国流のスピード経営は、高い技術力を持ちながらもフルスクラッチ開発にこだわりがちな日本の自動車・部品メーカーにとって、大きな示唆を与えるものと言えるでしょう。中国という一つの市場だけを見るのではなく、その開発スピードとビジネスモデルそのものを直視し、対抗策を練ることが、いま日本企業に求められています。
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【オンデマンド】IT企業が塗り替える中国EVビジネス、トヨタの"対抗"戦略
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謝意
名古屋大学の山本真義教授には、SU7の実車調査に便宜を図っていただくとともに、ベンチマーク用のドア2枚をご提供いただきました。
また、島津製作所様にはドアトリムの構造解析のためのX線透過撮影していただきました。名古屋での調査会には複数の企業様にご参加いただきました。お礼申し上げます。
プロフィール

高原忠良(たかはら・ただよし)
2020 年にTech―T設立。
「現地現物」の精神で部品分解調査や、中国・東南アジア現地取材をもとに、⾃動⾞産業の将来動向まで多領域で情報発信中。
プラスチックや樹脂部品生産や材料の生産・開発に携わる自動車用途プラスチックの第一人者。
1980 年、山形大学理学部卒。2008 年、山形大学理工学研究科卒(工学博士)。
1980~1989 年、新日本無線(現:日清紡マイクロデバイス)。
1989~2012 年、トヨタ自動車。
2012~2018 年、サムスンSDIなどグローバル企業で勤務。
2017-2025年、埼玉工業大学 客員教授など産学両分野で活躍。
セミナー・メーカー支援・中国視察ツアー・日経クロステックへの寄稿など幅広く活躍中。ホームページでも各種調査情報を元に、記事や動画を多数掲載
https://www.tech-t.jp/

PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。
