成形品設計 ここがポイント!(その1)―樹脂流路の設計―
2018.02.14
樹脂流路の設計その前に
まずは写真1をご覧ください。これはカメラ・ファインダー・レンズ製品を「サイドゲート方式、4ケ取り」で成形した例です。このように型内に射出された溶融樹脂は、スプル、ランナー、ゲートなどの樹脂流路を経て製品を成形する部分(キャビティ)に送られますが、実はこの樹脂流路の設計が製品の質を高めるためにはとても大切です。設計する際には次の4つのポイントを押さえておきましょう。

写真1 カメラ・ファインダー・レンズ成形品(サイドゲート、4個取り)
①樹脂流路では圧力低下を考慮すべし
図1は射出圧、保圧が樹脂流路で圧力低下する様子を示しています。このように樹脂流路では圧力損失が起きるので、キャビティに達するときには射出圧や保圧よりも40%~60%程度低くなるのが一般的です。ですから流路設計をするときは、圧力損失を考慮して、必要な圧力がキャビティ内にしっかり伝わる設計が求められます。

図1 圧力損失の概念図
②多数ケ取りでは同時充填が鉄則
多数ケ取りでは各キャビティへの充填のバラつきが、製品品質のバラつきに直結します。それを避けるために、それぞれのキャビティに同時充填するよう、ランナー配列、ゲートサイズなどを設計しなければなりません。
③冷えて固化した樹脂をキャビティに流入させるな
樹脂経路内で冷えて固化した樹脂が溶融樹脂とともにキャビティ内に入ってしまうと、製品の外観不良や強度低下を起こします。そのため、固化した樹脂を樹脂流路内に留めるように設計する必要があるのです。
④ゲートシールするとキャビティ内に圧力は伝わらない
ゲートが固化することをゲートシールといい、成形過程では樹脂流路のゲート部に最初の固化が見られます。そしてゲートが固化すると成形機からの圧力はキャビティ内に伝わらなくなります。ゲートが固化する時間はゲートの方式やサイズによって異なりますが、ゲートシールするまでは一定の圧力で加圧(保圧)することが重要です。保圧が低すぎると成形品の表面が凹む(ひけ)や収縮などの不良の原因にもなります。
スプル、ランナー、スラッグウェル、ゲートって何?
【スプル】
スプルは、成形機ノズルとランナーをつなぐ流路です。型開き時にはスプルが離型しやすいように抜きテーパーを付けます。
【ランナー】
ランナーは、スプルからゲートまで溶融樹脂を流すための流路です。各キャビティに必要な圧力が均等に伝わるように、ランナー配列、ランナー長と径など、緻密な設計が必要となります。
【スラッグウェル】
スラッグウェルには流路としての役割はありません。冷えて固化した樹脂がキャビティに入らないようにする樹脂溜りです。スプル部は成形機ノズルと接しているため、ノズル内で固化する場合やノズルから流れ込んだ樹脂(鼻たれという)がスプル内で固化する場合に、スラッグウェルがキャビティへの流入を防いでくれるのです。
【ゲート】
ゲートは文字通り溶融樹脂が流れ込むキャビティへの入り口です。製品の品質や生産性にダイレクトに影響しますから、ゲート方式や位置の選定は設計上きわめて重要です。
精度にも生産性にも影響を与える樹脂流路設計
さて、もう一度、写真1をご覧ください。ここに示したファインダー・レンズは比較的厚肉な製品ですので、太目のサイドゲート方式で設計されています。ただし、ゲートは成形後に仕上げます。写真2はポリアセタールを用いたピンポイントゲート方式の2ケ取り平歯車の成形品です。

写真2 平歯車成形品(ポリアセタール、ピンポイントゲート、2個取り)
この場合には歯車の刃先の箇所にサイドゲートを設けることができませんので、製品面にピンポイントゲートを設けています。しかも、歯車精度を考慮した5点ゲート方式の採用により、キャビティ内圧ができるだけ均等になるよう配慮されています。この方式を使う最大のメリットは、型開き時にゲートは自動切断するので、生産性が目に見えて向上することです。ほかにも、いろいろなゲート方式がありますので、ぜひ調べてみてください。
本間精一氏プロフィール
【略歴】
1963年、東京農工大学工学部工業化学科卒業。三菱江戸川化学(株)[現・三菱ガス化学(株)]入社。ポリカーボネートの応用研究、技術サービスなどを担当。1989年、プラスチックセンターを設立、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性PPEなどの研究に従事。1994年、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)の設立に伴い移籍。技術企画、品質保証、企画開発、市場開発などの部長を歴任。1999年、同社常務取締役。2001年、同社退社。本間技術士事務所を設立。
〈主な著書〉
『やさしいプラスチック成形材料』(三光出版社)/『知っておきたいエンプラ応用技術』(三光出版社)/『プラスチック製品の強度設計とトラブル対策』(エヌ・ティ・エス)/『プラスチックポケットブック』(技術評論社)/『設計者のためのプラスチックの強度特性』(丸善出版)/『射出成形特性を活かすプラスチック製品設計法』(日刊工業新聞社)/『実践 二次加工によるプラスチック製品の高機能化技術』(エヌ・ティ・エス)/『プラスチック材料大全』(日刊工業新聞社)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

