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プラスチックの燃焼性と難燃化

2018.05.02

この記事では…

プラスチックの構成元素による燃焼性について解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

プラスチックはなぜ燃えるか

燃焼に必要な3要素は可燃物、点火源、酸素供給です。プラスチックの主な構成元素は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)です。プラスチックに火源(点火源)を接炎すると、温度が上昇し、やがて分解温度に達します。プラスチックの種類にもよりますが、酸素の存在下で熱分解するとメタン(CH₄)、一酸化炭素(CO)などの可燃性ガス(可燃物)が発生し、発火します。大気中(酸素供給)ではいったん燃え出すと燃焼が持続することになります。また、製品肉厚が薄いほど、接炎箇所の温度上昇が速いので燃えやすいことになります。

①プラスチックによって燃焼性は違う

燃焼を持続するには酸素が供給されることが必要ですが、酸素濃度が低くても燃え続けるプラスチックは燃えやすいことになります。JIS K7201では、酸素と窒素の混合気体中の酸素濃度を変えたときに試験片が燃え続ける最小酸素濃度を酸素指数(OI)としています。表に各種プラスチックの酸素指数を示します。大気中の酸素濃度は約20%ですから、酸素指数が20以下のプラスチックは燃えやすいことになります。このように燃えやすいプラスチックもあれば燃えにくいプラスチックもあります。

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*文献からの引用値

②燃焼性の違いはプラスチックの構成元素の違い

プラスチックの構成元素によって燃焼性に違いが生じます。一般的には、次の傾向があります。

a)分子中に酸素や水素元素を多く含むプラスチックは燃焼時に可燃性ガスを多く発生するので燃えやすく、逆に少ないプラスチックは燃えにくいです。

b)分子中にふっ素、塩素、硫黄などの元素を含むプラスチックは燃焼時に不燃性ガスを発生して酸素を遮断するので難燃性になります。このようなプラスチックには、ふっ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィドなどがあります。

難燃化するには、どんな難燃剤が使われるか

プラスチックを難燃化するにはハロゲン系、りん系、無機系などの難燃剤を添加します。

ハロゲン系難燃剤は不燃性ガスによる酸素の遮断、燃焼時の分解生成物(活性ラジカル)の捕捉などにより難燃化します。ハロゲン系難燃剤には塩素系や臭素系がありますが、燃焼ガス成分の有害性や欧州のRoHS指令(有害物使用制限指令)の関係から、最近では使用されることは少なくなっています。

りん系難燃剤は、りん化合物の熱分解により生成するりん酸被膜や脱水作用による炭化被膜による酸素及び熱の遮断効果で難燃化します。りん系難燃剤には無機りん酸塩系、赤りん系、りん酸エステル系などがあります。

無機系難燃剤は、加熱時の結晶水の解離による燃焼温度の低下により難燃化します。

難燃剤には結晶水を含んだ水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムがあります。

成形上の留意点

ふっ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィドなどは、成形時に微量な腐食性ガス(酸性ガス)が発生することは避けられません。また、ハロゲン系、りん系などの難燃剤では、種類や添加率によって差はありますが、成形時に腐食性ガスが発生します。そのため、成形上では次のことに注意する必要があります。

a)熱分解すると腐食性ガスの発生量が多くなるので、成形温度を低く、シリンダ内の滞留時間を短くする配慮が必要です。

b)スクリュおよびヘッドは腐食摩耗しやすいので、耐食性材質の使用または硬質クロムめっき処理を施すことが推奨されます。

c)金型キャビティも腐食しやすいので、耐食性材質または硬質クロムめっき処理を施すことが推奨されます。また、ガス逃げのよくない箇所にはガスベントを設けることが必要です。

d)成形終了後には金型キャビティ表面の付着物を清掃したのち保管することが必要です。

 

本間精一氏プロフィール
【略歴】

1963年、東京農工大学工学部工業化学科卒業。三菱江戸川化学(株)[現・三菱ガス化学(株)]入社。ポリカーボネートの応用研究、技術サービスなどを担当。1989年、プラスチックセンターを設立、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性PPEなどの研究に従事。1994年、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)の設立に伴い移籍。技術企画、品質保証、企画開発、市場開発などの部長を歴任。1999年、同社常務取締役。2001年、同社退社。本間技術士事務所を設立。

〈主な著書〉

『やさしいプラスチック成形材料』(三光出版社)/『知っておきたいエンプラ応用技術』(三光出版社)/『プラスチック製品の強度設計とトラブル対策』(エヌ・ティ・エス)/『プラスチックポケットブック』(技術評論社)/『設計者のためのプラスチックの強度特性』(丸善出版)/『射出成形特性を活かすプラスチック製品設計法』(日刊工業新聞社)/『実践 二次加工によるプラスチック製品の高機能化技術』(エヌ・ティ・エス)/『プラスチック材料大全』(日刊工業新聞社)

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本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数