ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)とは? - プラスチック・樹脂の成形材料DB PlaBase(プラベース)
2018.09.19

プラ博世
こんにちは!プラスチックナビゲーター・プラ博世です。
昭和40年代に発売されていた「アーム筆入れ」って聞いたことがある?当時、「象が踏んでも壊れない」というCMで話題になったんだけど…。実はこのアーム筆入れは、前回ここで紹介したポリカーボネート(PC)製。強くて壊れないっていうところが今の環境問題に対する意識の高まりにマッチしているみたいで、「NEWアーム筆入れ」として販売されているんだって!昭和の人気筆箱が、平成でも大ヒット商品になる予感が…。
さて、今回のテーマは「ABS樹脂」について。どんなものなのか、いろいろ紹介していくのでよろしくね。
ABS樹脂はこうして作られる!
ABS樹脂は、アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)の3成分からなる非結晶性合成樹脂。この3つの成分の配合率を変えることによって様々なABS樹脂を作ることができるし、3つの成分に他の成分を加えることによっても特別な性能を持ったABS樹脂を作ることができるんだよ。3つの成分のうちのブタジエン(B)の代わりに別の素材を使うことで、さらに耐候性を高めることができる。
例えば、ブタジエン(B)の代わりにアクリルゴムを重合させたASA樹脂、塩素化ポリエチレンを重合させたACS樹脂、エチレン系ゴムのEPDMを重合させたAES樹脂などがあるね。透明ABS樹脂は、本来不透明なものにメタクリル酸メチルを重合させることで透明なものになる。
ABS樹脂の製法は、大別するとポリマーブレンド法、乳化グラフト法の2つ。ポリマーブレンド法は、アクリロニトリル(A)とスチレン(S)からなるAS樹脂に、合成ゴムの主成分ブタジエン(B)と添加剤を加えてミキサーで混ぜ合わせ、押出機でペレット化するという製法。
もう一方の乳化グラフト法は、スチレン(S)にアクリロニトリル(A)とラテックス、乳化剤などを混ぜ合わせて、遠心分離機で水分を取り除いた後、押出機でペレット化するというもの。
2つの製法は、これまで3つの成分の長所を生かすために行われてきた研究開発から生まれたと言っていいかも。だって、ABS樹脂は様々な配合や製法の実験を経た結果、ここまできたんだもの。
ABS樹脂は幅広く使われているプラスチック素材なんだね
ABS樹脂は、今や工業製品には欠かせないと言われている。現代の生活はABS樹脂によって作られている…なんて言っている人もいるよ。2016年、日本のABS樹脂の生産量は22万7千トン。しかしながら、世界では800万トンものABS樹脂が生産されているんだ。そして最も需要が多いのは、自動車関係かな。
他には住宅やノートパソコン、テレビ、洗濯機、冷蔵庫などのハウジング類、挙げたらきりがないくらい。パソコン、テレビなどのような電気製品には、難燃材を添加した難燃グレードが多く使われているかな。とにかくABS樹脂で作られているものはたくさんあるね。
教えて!ABS樹脂が幅広く使われている理由
ABS樹脂は3つの成分の長所を生かすために、改良を重ねて作られたもの。アクリロニトリル(A)は耐熱性、機械的強度に優れている。そして、ブタジエン(B)はゴムの特性を持っていて耐衝撃性に優れている。スチレン(S)には光沢性、加工性があるというのが長所。ただ、耐熱性が高いといっても100℃程度。可燃性なので燃えるということや日光や紫外線で強度が劣化するという短所もある。
ケミカルクラックって、聞いたことあるかな?樹脂に応力と薬品が関わることで壊れることを言うんだけど、製品に洗剤や薬品が触れることが想定される時は成形品に使う素材も慎重に選ぶ必要があるんだね。それでも、ABS樹脂が幅広く使われているのは、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形などいろいろな成形法に対応していて大量生産できる素材だから。そして、3つの成分の特性の他に表面加工や塗装がしやすいからだろうね。特にデザイン性が重視されるような製品には多く使われるようになってきている。
ABS樹脂の加工法は多彩だね
ABS樹脂のいいところは、加工がしやすいということ。成形をした後に、メッキや塗装、印刷などの加工が可能。ただ、塗装するときは使う溶剤によって破損したり劣化したりということはあり得るけど、それさえわかっていれば大丈夫。
メッキ加工の代表的なものを挙げると、自動車のフロントグリルなんかがそう。正面から見た時に一番目立つ車の顔みたいな部分。あれがABS樹脂のメッキ加工。ABS樹脂のブタジエン(B)だけを溶かすエッチング処理を施しているって、すごいよね。
また、光沢性という特性を生かせば、塗装をしなくても射出形成だけで高級感のある美しい仕上がりにできるんだ。例えば、最近の薄型テレビの外面は光沢のあるブラックだよね。これは塗装することなく、射出成形で作られているんだよ。研磨や塗装をしないからコスト削減にもなるし、こういうのも、ABS樹脂だからできること。
最近は3Dプリンターが普及してきているけど、今後その材料としてもABS樹脂の需要が伸びていくと言われている。ABS樹脂は他の成分と混ぜ合わせることでいろいろな特性を出すことができるという素材だから、3Dプリンターで何を作るかによってABS樹脂の成分配合率を変えればいいってことだよね。ABS樹脂の加工柔軟性は、プラスチック素材の中でもピカイチってところかもしれない。
ABS樹脂のリサイクルが活発化している
今の時代、地球の環境問題が重要視されるようになってきているけど、ABS樹脂のリサイクルが進められているってことを知ってた?例えば、複写機から再生したABS樹脂が電卓や小型プリンターの部品などに生まれ変わっていたりする。
他のプラスチック素材でもリサイクルは行われてはいるけど、リサイクル後にある程度の物性を保持しているのはABS樹脂だけなんだとか。リサイクル率の高さではPETボトル。なんと83.9%にもなるんだ。
リサイクル製品を使うことは環境や経済的にもいいことだとわかっていても、品質が落ちてしまうというのはちょっと…って思ってしまうよね。でも、ABS樹脂はリサイクル後も物性があまり変わらないという利点があるから、リサイクルが活発になってきているのかもしれないね。
今回のまとめ
・ABS樹脂は、アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)の3成分でできている。
・自動車のエアコンの吹き出し口、パワーウインドウのスイッチ、カーオーディオやカーナビ、ドアミラー、シフトノブなどにABS樹脂が使われている。他には住宅やノートパソコン、テレビ、洗濯機、冷蔵庫などのハウジング類にも使われている。
・ABS樹脂が幅広く使われる理由は、いろいろな成形法に対応していて加工がしやすいから。
・ABS樹脂はリサイクル後もあまり物性が落ちない。
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PlaBase編集部
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