ポリ乳酸真空成形品に関する解説。バスタブ形状をした大型の成形品の試作、およびその成形で予想される製品の物性不足を補う手法について解説する。
【ポリ乳酸真空成形品Ⅲ】-積層手法によるポリ乳酸繊維強化ポリ乳酸真空成形品の開発-
2020.04.02
今回の記事は…
緒 言
これまでポリ乳酸の真空成形について基礎的な検討をおこなったが、本報では、バスタブ形状の大型成形品の試作と、大型成形品で予想される製品の物性の不足を補うための、ポリ乳酸を強化繊維として使用するグリーンプラスチックFRPによる物性の向上手法について報告する。
実験方法
材料
汎用押出グレードのポリ乳酸(PLA)(ユニチカ製テラマックTP-4000)を用いて厚さ3mmまたは6mmの真空成形用のポリ乳酸シートを作製した。繊維強化用ポリ乳酸布には、ポリ乳酸繊維2種(ユニチカ製テラマックdT-280、dT-560)を用いて、それぞれ伸縮性に富んだ丸編み物を作成した。ポリ乳酸シートとポリ乳酸布の接着による繊維強化には、ポリ乳酸水溶性エマルジョン(ユニチカ製テラマックLAE-015S)または溶剤を用いたポリ乳酸系樹脂シール剤(大日精化工業製バイオテックカラーHS PL-1シール剤)、ポリ乳酸系樹脂ドライラミネート剤(大日精化工業製バイオテック DL E-L)3種を硬化剤として用いた。
真空成形
6mmのポリ乳酸シートを用いてバスタブ(長さ1400mm、幅900mm、深さ600mm)を試作した。
ポリ乳酸FRPの作製
330×200×3mm(厚さ)のポリ乳酸シート上に2種の繊維で作製した布を強化材として硬化剤を用いて接着し、ポリ乳酸繊維強化材料を試作した。硬化条件は、ポリ乳酸水溶性エマルジョンでは一夜放置後、120℃―12Hで水分の乾燥と樹脂分の溶融をおこない、ポリ乳酸系樹脂シール剤では、一夜放置し溶剤を蒸発させた。ポリ乳酸系樹脂ドライラミネート剤では一夜放置後40℃―48H加熱し、樹脂分を反応固化させた。
物性試験
材料試験機(インストロン製インストロン5567)を用いて、JIS K7171により3点曲げ試験を行った。なお強化材面を支点側とした。
衝撃試験機(島津製作所製、ひょう量1.5kg-M)を用いて、JIS K7111に準拠し試験を行った。試験片にはAタイプノッチを入れた。
結果および考察
大型真空成形品の試作
図1に示すように、形状的には満足のいくものを試作することができた。しかし、成形日が変わると成形は不安定となり成形できない場合があった。このことから成形装置以外の周囲環境を成形条件として考慮する必要があることがわかった。

【図1 試作した大型真空成形品(バスタブ)】
ポリ乳酸FRPの試作と物性
表1に試作したポリ乳酸FRPの成形条件と成形性についてまとめた。3種の硬化剤のうち、ポリ乳酸水溶性エマルジョンは、ポリ乳酸布の重ね数が増加すると成形時にシートと布の接着面ではがれ、成形できなかった(試料FRP-3,4,6)。これは、今回の条件ではポリ乳酸水溶性エマルジョンの接着力が低いことと、水分で膨潤したポリ乳酸布が乾燥時に収縮し接着面で強いせん断が生じることによると考えられる。同様にポリ乳酸系樹脂シール剤とポリ乳酸系樹脂ドライラミネート剤では、接着面の剥離は生じないもののシートのそりが生じた。これらのことから、FRPの作製には、硬化剤中の樹脂分量をできるだけ高くし成形時のポリ乳酸布の収縮を防ぐことや、接着面の処理(プライマーやサンディング等)が必要であると考えられた。
表2に試作したポリ乳酸FRPの物性試験結果をまとめた。ポリ乳酸水溶性エマルジョンを使用した場合には、成形時の加熱により、シートがアニールされ各物性値が向上した。また、ポリ乳酸布が1枚であっても補強効果が見られた。ポリ乳酸系樹脂シール剤を用いた場合においてもポリ乳酸布の補強効果が見られ、特に繊維系が太い(dT-560)ときに顕著になった。

【表1 ポリ乳酸FRPの成形条件と成形性】

【表2 ポリ乳酸FRPの成形条件と物性】
dT-560のポリ乳酸布を5枚重ねた場合には、未処理の試料PLA-2に比べ曲げ強さが約50%向上し、シャルピー衝撃値は約8倍となった。ポリ乳酸系樹脂ドライラミネート剤では、シャルピー衝撃値において効果が見られたが、曲げ強さと曲げ弾性率に関しては効果が見られなかった。これは、硬化が終了しても比較的柔らかいラミネート剤の材料特性のためであると考えられた。
まとめ
ポリ乳酸の大型真空成形について基礎的な検討をおこない、さらに、真空成形品を中心にポリ乳酸繊維を強化布として使用するグリーンプラスチックFRPによる物性の向上手法について検討した。その結果、大型工業製品のバスタブ(長さ1400mm、幅900mm、深さ600mm)の成形についてめどを立てた。さらにFRP化には、ポリ乳酸系樹脂シール剤の成形性が高いことがわかった。また、ポリ乳酸布の積み重ね数を多くすると成形時に製品の変形が起きやすくなるものの、曲げ強さや衝撃強度を向上させることができた。
謝辞
本研究は,(独)科学技術振興機構 研究成果活用プラザ石川のFS委託研究(可能性試験)の一部として実施しました。また、研究に関して多くの助言をいただいた富山県立大学川越教授に感謝いたします。実験に協力いただいた、(株)日本成工、ユニチカ(株)、(株)セコン三木、大日精化工業(株)、川田ニット(株)の各社に感謝します。
この記事は、富山県工業技術センター研究報告No.20(2006)に掲載された内容を編集したものです。
(文責:富山県産業技術研究開発センター 水野渡)

PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。
