3Dプリンタの動向について解説する本連載。今回は、粉末焼結積層造形と粉末固着造形について解説します。
【3Dプリンタ動向】さまざまな造形手法と材料2
2020.04.21
今回の記事は…
3Dプリンタにはさまざまな造形方式が存在し、それぞれ特徴やメリット・デメリットがあります。目的や予算に応じて使い分けていくことになります。今回は、粉末焼結積層造形と粉末固着造形について解説します。また3Dプリンタの造形物の材料指定に関して説明します。
粉末焼結積層造形
粉末焼結積層造形では、粉末の材料をレーザーや放電で溶融させ、焼結させていくことで少しずつ積層しながら形状を作り上げます。方式は選択的レーザー焼結法(SLS)と選択的レーザー溶融法(SLM)、電子ビーム溶融法(EBM)があります。従来は数千万円クラスの造形機と設備が必要な手法でした。SLSについては2014年に特許が失効したことで、数百万以下にまで値段が落ちた廉価機種が登場しています。
粉末焼結積層造形ではサポートが不要です。「パウダーベッド」の中に造形物が出来上がっていくので、余計なパウダーを吹き飛ばすことで造形物が取り出せます。ただし粉末除去の設備が必要になります。
なお、粉末焼結積層造形の材料は造形専用のものになります。ナイロンなどのプラスチックの他、プラスチックにガラスやカーボンを混ぜた材料、金属にも対応しています。
粉末固着造形
粉末固着造形は、フルカラー3Dプリンタの手法としても知られてきました。「バインダージェッティング」とも呼ばれます。インクジェット式の一種です。ノズルから出てくるのは、接着剤の一種で「バインダー」というものです。フルカラーの場合は接着剤に色が入っています。薄く粉体を敷いた層に接着剤を吹いて固化させ、積層していきます。造形物の表面はざらりとしています。
一時期、フルカラーの粉末固着造形の技術が特定の企業の技術であったため、市場には長らく、フルカラー機が登場しませんでした。現在は異なる手法のフルカラー機がいくつか存在します。
粉末焼結積層造形と同様にサポートは生成されませんが、含浸という後処理が必要です。
材料は石こうの他、プラスチック、砂糖にも対応しています。石こうはプラスチックなどと比較して安価です。
マルチジェットフュージョン方式
マルチジェットフュージョンはHPが開発した手法です。粉末の層の中にバインダーを噴くなど従来の粉末固着造形と似ていますが、一層ずつ固めていく方式ではなく、形状全体をゆるく接着させた後、一気に固化させることで造形スピードを高速化しています。今のところは、材料はナイロンのみです(記事公開時点)。
材料の指定が細やかにできる方式も登場、発展に期待
現在、3Dプリンタの造形は樹脂や金属、石こう、木材などさまざまな材質に対応します。さらにチョコレートや砂糖に対応した機種もあります。
しかし3Dプリンタは専用の造形材料を用いる手法が多く存在します。FDMは工業製品用のプラスチック材料が利用できますが、種類は射出成形と比べれば非常に限定的です。また積層というプロセスのため、3Dプリンタの部品は、射出成形の部品とは強度の特性が異なります。
また3Dプリンタの材料指定は、現在、1つの造形物に対して1つが基本です。ただしインクジェット式は複数の材料ノズルを設けている機種であれば、材料を混ぜ合わせて、技術的な靭性や耐熱性などエンジニアプラスチックに近い特性を作り上げることができます。
マルチジェットフュージョン方式は、これまでの3Dプリンタにはなかったデータの持たせ方(ソフトウェア)に特長があり、話題になりました。従来の3Dプリンタは部品単位か部位単位でのみ材料が指定できましたが、マルチジェットフュージョンはボクセルデータ(体積の要素。いわゆる3D版のピクセルデータ)で材料や色の指定が細やかにできます。なお、ボクセルデータの指定はインクジェット式の3Dプリンタの中にも対応機種が登場しています。
ボクセルデータの指定ができると、ボクセルごとに材料の定義ができるため、1つの部品の中にさまざまな材料の部位を設定できます。また複合材料も作れるようになります。ソフトウェアのプログラムとしては基礎ができているものの、ハードウェア(装置)の対応は現在も発展の途上といったところです。今後の動向に要注目です。
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