成形技術の課題とこれから(1)-製品の高付加価値化を目指してー
2018.05.07
多色成形・多材質成形による性能・機能の高品位化
自動車内装部品、携帯端末、カメラなどでは多様な意匠、性能、機能などの要求に応えることが求められますが、通常の射出成形では、使用するプラスチックによって製品の性質は決まりますので、多様な要求に応えられないという課題があります。
その対応のため、多色成形や多材質成形による製品開発が活発化しております。ここで、特に定義はありませんが、主に意匠をよくするため、いろいろな色相の材料で成形する場合は多色成形、または2色の場合は2色成形と言います。性能・機能をよくするため異なる材料で成形する場合は多材質成形と言います。ビデオやデジタルカメラのグリップ、歯ブラシの柄、スイミングゴーグルなどは、硬質プラスチックと熱可塑性エラストマーを多材質成形することでソフトタッチ感が得られます。自動車のドアトリム、インパネなどでは、硬質プラスチックの裏面に発泡プラスチックを多材質成形することで軽量化と剛性向上が可能になります。自動車のリアランプレンズではクリアと赤色の透明材料を2色成形することで意匠性向上と照光機能を向上できます。

図1 コア水平回転方式の2色成形金型の概念図
多色成形・多材質成形では、材料の種類に応じて複数の加熱シリンダを搭載した専用射出成形機を用います。材料は、最初に成形する1次材料と次に成形する2次材料が、成形時に界面でよく溶着することが必要です。金型は、1次成形後に1次成形品を2次成形金型へ移動する機構が重要です。移動機構にはいろいろな方式がありますが、ここでは水平回転移動機構の例を図1に示します。この図は横型射出成形機に取りつけた金型を上から見たときの概念図です。金型はA,C,Bの3枚金型から構成されます。AとC、CとBの間で型開きし、コア型Cが水平回転する機構になっています。図のように、1次材料(透明)を1次成形型(A-C)に射出して1次成形品を成形します。次に型開きしたのち、コア型Cを水平回転させて2次成形型に移動し、型締め後に2次材料(黒色)を2次成形型(C-B)に射出します。実際には、両動作を同時に行い、1サイクルで2色の製品を成形します。
加飾成形による意匠性向上
射出成形は決められた意匠の製品を多量生産するのに適した成形法です。同一製品で異なる意匠が求められる場合には、印刷、塗装などの2次加工で対応していました。しかし、これらの2次加工では生産性が良くないこと、加工コストがかかること、品質ばらつきが大きいこと、環境安全対策が必要であることなどの課題があります。その対策として成形同時加飾法が開発され、自動車計器パネル、携帯端末ハウジング、各種電子機器などに応用されています。
成形同時加飾成形法は次の利点があります。
①印刷、塗装などの2次加工に比較して生産性が向上します。
②加飾フィルムの意匠を変えることで、多様な意匠要求に応えられます。
③印刷、塗装を用いないので環境安全性の向上につながります。
成形同時加飾法にはフィルムインサート法、転写法などがあります。フィルムインサート法は加飾フィルムを金型に装着したのち、溶融樹脂を射出してフィルムと一体化することで加飾製品を得る方法です。フィルムインサート法の1つとして、ホットスタンプ箔を用いたインサート成形法もあります。図2は同法による成形プロセスと自動車計器パネル類です。フィルムにメタリックホットスタンプ箔を貼り合わせた積層フィルムを3次元形状に真空成形したのち、不要部をトリミングします。これを金型に装着しフィルム側に射出することでメタリック外観製品が得られます。転写法は、意匠層および接着層を施したキャリアフィルムを連続的に金型に移送し、射出成形によって型内で接着層を介して意匠層を成形品側に転写したのちキャリアフィルムを剥離する方法です。

図2 ホットスタンプ箔による加飾成形法と自動車計器パネル類(KURZ社カタログから引用)
本間精一氏プロフィール
【略歴】
1963年、東京農工大学工学部工業化学科卒業。三菱江戸川化学(株)[現・三菱ガス化学(株)]入社。ポリカーボネートの応用研究、技術サービスなどを担当。1989年、プラスチックセンターを設立、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性PPEなどの研究に従事。1994年、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)の設立に伴い移籍。技術企画、品質保証、企画開発、市場開発などの部長を歴任。1999年、同社常務取締役。2001年、同社退社。本間技術士事務所を設立。
〈主な著書〉
『やさしいプラスチック成形材料』(三光出版社)/『知っておきたいエンプラ応用技術』(三光出版社)/『プラスチック製品の強度設計とトラブル対策』(エヌ・ティ・エス)/『プラスチックポケットブック』(技術評論社)/『設計者のためのプラスチックの強度特性』(丸善出版)/『射出成形特性を活かすプラスチック製品設計法』(日刊工業新聞社)/『実践 二次加工によるプラスチック製品の高機能化技術』(エヌ・ティ・エス)/『プラスチック材料大全』(日刊工業新聞社)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

