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成形技術の課題とこれから(2)-成形コストと不良率の低減を目指してー

2018.05.08

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成形コストの低減

定義はありませんが、製品肉厚が約1.0mm以下で、1サイクル5~6秒以下の成形を薄肉ハイサイクル成形と言います。薄肉ハイサイクル成形によって、材料費節減と生産性向上ができますので成形コストの低減につながります。

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表1 薄肉ハイサイクル成形品の例

汎用プラスチックを用いた食品容器や飲料カップでは、すでに薄肉ハイサイクル成形技術が確立しています。成形の難しいエンジニアリングプラスチック(エンプラ)においても、表1に示しますように薄肉ハイサイクル成形技術の開発が進められています。成形サイクルは2~5秒で、取り数は1~4取りで成形されています。勿論、取り数を増やせば生産性は向上しますが、製品のばらつきが大きくなるので限界があります。これらの製品では、ハイサイクル成形と同時に厳しい品質を求められるところに成形技術の難しさがあります。例えば、LED導光板では高透明性、高寸法安定性(低そり)、高厚み精度、プリズムパターンの良転写性、低光学ひずみ、低異物などが求められます。薄肉ハイサイクル成形と厳しい品質を両立させるには、成形技術の総合力が必要になります。

成形材料では、良流動性、良熱安定性、良離型性などに対応する材料開発が進められています。

射出成形機では、高性能電動式射出成形機が開発されています。電動式では高速射出で、かつ充填完了直前にスローダウンしたのち停止する精密制御ができますので、薄肉ハイサイクル成形が容易で、かつバリ不良も防止できます。

成形品設計では、冷却時間は肉厚の2乗に比例しますので、薄肉化すると冷却時間の短縮につながります。ゲートは自動切断でき、かつ型開きストロークを短くできるサブマリンゲート方式を採用しています。

金型設計では、ハイサイクル化に伴って単位時間に型内に持ち込まれる熱量は多くなりますので、速やかに金型に熱移動できるように金型温調回路を設計しています。

ガスによる成形不良の低減

エンプラの成形では、溶融樹脂から発生するガスによる成形不良を低減することが課題になっています。

その背景としては、①成形温度が高いこと、②配合剤(難燃剤、光安定剤、充填剤、強化材)も複雑配合で、かつ高配合率であること、③光学レンズ、光ディスク基板、導光板などの成形では微量のガスも品質に悪影響すること、④精密成形金型では金型の合わせ面(パーティングライン)からのガス抜けが悪いこと、⑤高温・高速射出では、通常のガスベントでは十分なガス抜きができないこと、などがあります。

ガスによる成形不良には、未充填、ウェルドライン、樹脂焼け、表面くもり、転写不良などがあります。また、金型上では金型汚染、ベント孔つまり、金型腐食などの不具合があります。

対策としては、成形対策と金型対策があります。

成形上では次の対策がとられています。

①スクリュ供給部では熱と酸素による分解を抑制するため、窒素置換または真空引きする。

②低せん断発熱スクリュを搭載した成形機で成形する(せん断熱による熱分解防止)。

③ベント式射出成形機を用いてベント孔からガス抜きする。

一方、金型対策では、表2に示すように、金型用のベント部品または装置が市販されているので、製品形状に応じて適切なものを選定することが必要です。

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⁠本間精一氏プロフィール

【略歴】

1963年、東京農工大学工学部工業化学科卒業。三菱江戸川化学(株)[現・三菱ガス化学(株)]入社。ポリカーボネートの応用研究、技術サービスなどを担当。1989年、プラスチックセンターを設立、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性PPEなどの研究に従事。1994年、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)の設立に伴い移籍。技術企画、品質保証、企画開発、市場開発などの部長を歴任。1999年、同社常務取締役。2001年、同社退社。本間技術士事務所を設立。

〈主な著書〉

『やさしいプラスチック成形材料』(三光出版社)/『知っておきたいエンプラ応用技術』(三光出版社)/『プラスチック製品の強度設計とトラブル対策』(エヌ・ティ・エス)/『プラスチックポケットブック』(技術評論社)/『設計者のためのプラスチックの強度特性』(丸善出版)/『射出成形特性を活かすプラスチック製品設計法』(日刊工業新聞社)/『実践 二次加工によるプラスチック製品の高機能化技術』(エヌ・ティ・エス)/『プラスチック材料大全』(日刊工業新聞社)

本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数