「プラスチックの強度」について解説する本連載の4回目は、応力緩和について解説する。
応力緩和とはどんな現象か:プラスチックの強度(4)
2020.10.22
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
「応力緩和」は、粘弾性に起因する特性の1つである。一定のひずみを与えて放置すると直後に発生した応力(初期応力)が時間とともに小さくなる現象である。図1に示すように試験片平行部長さL₀に対して一定の引張変形ΔLを与えると、引張ひずみε(=ΔL/L₀)が生じる。

図1 一定ひずみの状態
負荷直後の引張応力σ₀は、フックの法則が成り立つ場合には、次式で示される。
σ₀=E×ε
σ₀:初期応力(MPa) E:ヤング率(MPa) ε:ひずみ(ΔL/L₀)
ひずみεを与えた直後には弾性ひずみεrが発生するが、時間がたつとポリマー間のずれによる粘性ひずみεtが生じるので、図2に示すようにεが一定ではεtが増大するとεrはその分だけ小さくなる。

図2 一定ひずみにおける弾性ひずみの緩和
εrが小さくなると時間経過後の応力σt(=E×εr)も小さくなる。一般に、応力緩和は応力緩和率と経過時間の関係で表される。ここで、応力残留率は次式で示される。
応力残留率(%)=(σt /σ₀ )×100
σ₀:ひずみを負荷した直後の応力(初期応力) σt:t時間後の応力

図3 プラスチックの応力緩和曲線
図3に示すようにひずみを負荷した直後の応力残留率を100%とし、時間が経つとどれだけ減少するかを示している。応力残留率は時間が経つと横軸に平行に近づく性質がある。この理由は粘弾性モデルにより説明されている(注1)。
また、図3のように温度が高くなると応力残留率は小さくなる。つまり、温度が高いほど応力緩和しやすくなる。

図4 応力緩和における取り付け部分の緩み
図4に示すように、成形品に設けられためねじを金属ボルトで締め付けて放置すると締め付け力が弱くなり、固定した部品が緩んでしまうことがある。これは締め付け応力(一定ひずみ)が応力緩和したことによるものである。
残留ひずみ、インサート金具周囲ひずみ、圧入(プレスフィット)ひずみなども一定のひずみが負荷される条件であるので、応力緩和が起きる。これらに関しては、今後の記事で解説する。
(次回へ続く)
※筆者注
注1:応力緩和は弾性を示すスプリングと粘性を示すダッシュポットを組み合わせた3要素モデル(図5(a))を用いると次式で示される。
σt=ε(E₂e-t/τ+E₁)

図5 粘弾性モデルと応力緩和特性
σt:t時間後の応力 ε:ひずみ(一定) E₁:スプリングAのヤング率
E₂:スプリングBのヤング率 t:経過時間 τ:緩和時間
τは緩和時間であり、この時間が短いほど緩和しやすいことを表す。温度が高いほどτは短くなる。この関係を示したグラフが図5(b)の応力緩和曲線である。同様に応力残留率も図3に示した曲線になる。

本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

