「プラスチックの強度」について解説する本連載の5回目は、「クリープ」について解説する。
クリープとはどんな現象か:プラスチックの強度(5)
2020.11.19
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
クリープも粘弾性に起因する特性の1つである。一定の応力を与えて放置すると時間とともにひずみが大きくなる現象である。図1に示すように、試験片に一定の荷重Wを加えると、次式に示す一定の引張応力が発生する。

図1 引張クリープ
σ=W/S
σ:引張応力(MPa) W:荷重(N) S:試験片の断面積(mm²)
応力σによって瞬間的に弾性ひずみεrが発生するが、時間が経過するとポリマー分子間のずれによる粘性ひずみεtが生じるので、時間経過後の全クリープひずみεTは次式になる。
εT=εr+εt
εT:全クリープひずみ εr:弾性ひずみ
εt:t時間経過後の粘性ひずみ(永久ひずみ)
εrは応力を解放すれば元に復元するが、εtは元には戻らず永久ひずみとなる。
εtは時間が経つとは大きくなるので、全クリープひずみεTも大きくなる。
全クリープひずみεTと経過時間tの関係を示す曲線が図2に示すクリープ曲線である。

図2 クリープ曲線
同図のように短時間側では全クリープひずみεTは大きくなるが、時間がたつと次第に横軸に平行になる性質がある。一般に横軸に平行になるときの全クリープひずみを「クリープ限度ひずみ」と称している。このような曲線を示す理由は粘弾性モデルにより説明されている(注1)。
図3のように応力が大きいほど全クリープひずみは大きくなる。

図3 応力σと全クリープひずみετ
また、図4のように温度が高いほど全クリープひずみは大きくなる。

図4 温度Tと全クリープひずみετ
一定の応力を負荷して長時間放置すると破断する。この現象をクリープ破壊またはクリープ破断という。クリープ破壊するまでの時間は負荷応力が大きいほど短くなる性質がある。
成形品に荷重を載せて放置すると、図5に示すように時間とともに点線のように変形し、時間が経過後に荷重を除いても元には復元しないのはクリープによるものである。

図5 クリープの例
常時内圧がかかる圧力容器や配管類、荷重が搭載されるシャーシやパレットなどではクリープひずみやクリープ破壊を考慮して設計しなければならない。これら設計については今後の記事で解説する。
(次回へ続く)
※筆者注
注1:クリープは3要素モデル(図6(a))を用いて、次式で示される。この関係をグラフにすると図6(b)になる。

図6 粘弾性モデルとクリープ
εt=σ/E₁+σ/E₂(1-e-t/λ)
εt:t時間後のひずみ σ:応力 E₁:スプリングAのヤング率
E2:スプリングBのヤング率 t:経過時間 λ:遅延時間
λは遅延時間であり、この時間が短いほどクリープ速度が増す。温度が高いほどλは短くなる。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

