ポリマーの長さを表す分子量の意味について、ポリエチレンを例にして解説します。
分子量と強度および成形性は、どのような関係があるか:プラスチックの強度(7)
2020.12.03
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックは長い鎖状分子である「ポリマー」が集まったもので、さらにポリマーの長さを表す指標が「分子量」である。今回は、代表的なプラスチックであるポリエチレン(PE)を例にして分子量の意味を説明する。
PEの化学式は次の通りである。

同式は繰り返し単位(CH₂-CH₂)をn個結合したことを表している。繰り返し結合数nを重合度といい、分子量は繰り返し単位の分子量と重合度nの積である。従って、同一のプラスチックでは分子量が大きいほど分子の長さは長いことを表す。ただしプラスチックは低分子量のポリマーから高分子量のポリマーまで分布しているので、平均分子量として表される。
例えば、分子量10,000のポリマーが10個と分子量100,000のポリマーが10個とが混ざっていると仮定すると、数平均分子量は次のように計算される。
数平均分子量=[(10,000×10)+(100,000×10)]/(10+10)=55,000
上式から、低分子量ポリマーの数が多くなると、数平均分子量は小さくなることが分かる。
プラスチックはポリマーの末端から破壊する性質がある。図1に示すように、低分子量ポリマーが多くなるほど、単位体積に占めるポリマー末端数が多くなるので破壊の起点が多くなる。

図1 分子の長さと破壊箇所の概念図
一般に、数平均分子量(以下「分子量」とする)と引張破壊強度の間には、つぎのような理論的関係がある。

上式は、ポリマー末端が破壊の起点になるために強度が低下するという考え方をもとに導かれた式である。この関係をグラフにすると図2に示す曲線になる。

図2 数平均分子量Mnと強度σB
同図のように、ある分子量以上では分子量が高くなると強度は徐々に大きくなるが、ある分子量以下では急激に強度が低下する。このように強度が急激に変化する分子量を限界分子量と称している。一般的にプラスチックは限界分子量以上の材料が使用されている。
一方、分子量が高くなると分子の絡み合い数が多くなるので溶融粘度は大きくなり、さらに大きくなると非溶融になる。そのため、成形法によって分子量の適正範囲は異なってくる。
① 射出成形では分子量が高いと溶融粘度が大きくなり流動性が悪くなるので、流動性のよい低分子量の材料が適している。
② 押出成形やブロー成形ではドロウダウン(注1)が少ない方がよいので、溶融可能な範囲で高分子量の材料が適している。
③ 非溶融の高分子量材料は溶液キャスティング法(注2)や焼結法(注3)で成形される。
射出成形用材料を例にして、分子量と強度および流動性の関係を図3に示す。

図3 射出成形材料の分子量範囲
同図から分かるように、分子量が高くなるほど強度は大きくなるが流動性は悪くなるので、強度と流動性の兼ね合いから、適正分子量範囲の成形材料が使用されている。
(次回へ続く)
※筆者注
注1:溶融樹脂が自重でだれる現象である。
注2:樹脂を溶剤に溶解した溶液を、水平面上に流し、溶剤を蒸発させてフィルムを加工する方法である。
注3:粉末材料を圧縮してブロックを作る。これを高温炉に入れて、粉末粒子を融着させて成形物を加工する方法である。
<過去の記事>
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数





