脆性破壊と延性破壊の違いや、最大引張応力の算出法などを解説する。
プラスチックはどのように破壊するか:プラスチックの強度(8)
2021.02.16
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックは外力によって発生する応力に耐えられなくなると破壊する。引張応力による破壊では脆(もろ)い割れ方をする脆(ぜい)性破壊と、伸びながら破壊する延性破壊の2つがある。
図1に脆性破壊と延性破壊の概念図を示す。

図1 脆性破壊と延性破壊の概念図
ポリマーの間からクラックが発生して破壊する様式が脆性破壊である(図1(a))。ポリマー間でずれながら破壊する様式が延性破壊である(図1(b))。一般的に延性破壊では強度ばらつきは小さいが脆性破壊で強度ばらつきが大きい。
同じプラスチックでも条件によって脆性破壊する場合と延性破壊する場合がある。温度が高いと延性破壊するが、温度が低くなると脆性破壊する傾向がある。例えば、ポリスチレンは室温では脆性破壊するが50℃程度に昇温すると延性破壊する。ポリカーボネートは室温では延性破壊するが、-40℃程度の低温になると脆性破壊する。このように脆性破壊と延性破壊を示す温度領域はプラスチックによって異なっている。
欠陥部があると応力集中源になるので、本来の強度より低い応力で破壊する。

図2 切り欠き底に発生する最大引張応力
図2のように、切り欠きがない場合に発生する引張応力(以下平均引張応力という)に対し、切り欠き底に発生する最大引張応力は次式で示される。

σ₀:平均引張応力、σmax:切り欠き底に発生する最大引張応力、L:切り欠き深さ、r:切り欠き底アール

上記を「応力集中係数」と称している。
上式から次のことが分かる。
1.切り欠き底アールrが小さくなると応力集中係数は大きくなる。そのため平均引張応力σ0に対し、切り欠き底に発生する最大引張応力σmaxは大きくなる。例えば、鋭角コーナでは先端アールは小さいのでコーナーには大きな最大引張応力σmaxが発生する。そのため低い平均応力σ0でも破壊する。
2.切り欠きの深さLが大きくなると、同様にして最大引張応力σmaxは大きくなる。そのため、大きな異物や気泡が存在するときには低い平均引張応力σ₀でも応力集中によって破壊する。プラスチック製品では鋭角コーナ以外に仕上げ跡の凹凸、ウェルドライン、気泡(ボイド)、異物、突き出しピン跡の段差なども応力集中源となる。応力集中源からクラックが発生するとクラックの先端アールが小さいので成長して破損することになる。
(次回へ続く)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

