【抜き勾配】量産のための製品設計その1:射出成形の基本(1)
2018.05.22金型とは、製品を大量生産するのに欠かせない重要なツールである。
たい焼きを一度に大量に作るのにたい焼きの型が必要なのと同じで、何かモノを大量に作るときにはその製品にあった金型が必要であり、自動車、家電、日用品、玩具などなど非常に多くの樹脂部品が金型を用いて量産されている。
その金型で製品を成形する場合にはいくつかのルールがある。
本連載では「量産のための製品設計」と題し、金型で製品を成形するために製品設計の段階で気をつけたいことを大きく次の5項目に分けて説明していく。
1 抜き勾配
2 肉厚
3 パーティングライン
4 アンダーカット
5 角R
量産のための製品設計その1 抜き勾配
抜き勾配とは、成形品を金型からスムーズに取り出すためにその製品自体につけた抜き方向に対する傾斜のことを言いう(図1)。成形時に溶融樹脂が冷却されて成形品になる時に成形収縮を起こすため、この抜き勾配がついていないと、成形品が金型に強く固着したり、成形品と金型が擦れながら摺動するため成形品不良や金型の破損の原因になってしまう。

勾配が付いていない場合の金型の動きをみてみると一見問題無さそうである。しかし、これだと金型が開く時や製品を突き出す際に成形品と金型がこすれてしまう(図2)。そうなると当然、成形品の意匠面に傷がついてしまうし、成形品の離型性も悪い。また、金型にも過剰な負荷がかかってしまう。要するに抜き勾配のない金型は、実用に供せない金型であるといえる。

これに対して、適切な勾配がついている場合には、金型が開く時や金型から成形品が突き出されるときに金型と成形品は離れながら動く(図3)。当然、型が開くときには成形品の意匠面をこすらずに開くし、離型性も良くなる。このように抜き勾配は金型で良品を成形するためには欠かせないものといえる。

図4の様なリブに勾配を付ける場合には、先端を基準にリブが太くなる様につける場合と根本を基準にリブが細くなるように勾配をつける場合の2通りが考えられる。

ここで気をつけたいのは相手部品のことである。図4の断面に対して相手部品が図5の様にレイアウトされる場合。先端を基準に勾配を付けてしまうとリブが太くなってしまうため相手部品と干渉してしまう恐れがある(図6)。

この様に金型で良品を得るためには抜き勾配が必要ではあるが、折角付けた抜き勾配が相手部品に対して干渉してしまうことは十分に考えられることである。そのため勾配を付ける際には相手部品に留意し、何処を基準にするのか、基準からどちらの方向に勾配を付けるのかをよく検討し、その成形品にとって最適な勾配を設定しなければならない。
量産に向けた製品設計のポイント
1. 抜き勾配をつける
2. 抜き勾配は相手部品に留意する
次の記事はこちら ・【肉厚】量産のための製品設計その2

プロフィール : 落合 孝明
1973年生まれ。株式会社モールドテック代表取締役(2代目) 本業の樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、デザインから制作手配まで一貫した中小企業の連携による業務展開を行っている。 日本の町工場の持つ『技から生まれる美しさ』を大切にしたプロダクトブランド【FACTONERY】企画・運営。 http://www.factionery.jp/ 著書 金型設計者1年目の教科書』(日刊工業新聞社/2014.03) 『すぐに使える射出成形金型設計者のための公式・ポイント集』(日刊工業新聞社 /2016/12/23)

Factionery:ファクショナリー
www.factionery.jp
