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クレーズとクラックはどんな違いがあるか:プラスチックの強度(10)

2021.03.11

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この記事では…

いずれもプラスチックにおけるひびの一種であるクレーズとクラックの形態の違いや、部品の破損や事故につながらないようにするためにどこに注意したらいいのかを解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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クレーズを「クレイズ」と表現することもがあるが、英語では「craze」であり同じ意味である。JIS用語(日本工業規格)では「クレーズ」となっているので、ここではクレーズという用語を用いる。

クレーズとクラックの概念を図1に示す。クレーズの内部には応力方向に配向した分子鎖が存在するが、クラックの内部は空隙(くうげき)である。

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図1 クレーズとクラック

クレーズを透過型電子顕微鏡で拡大観察すると、クレーズの中には配向した分子鎖が認められることからクラックとは区別されている。

また、クレーズは密度が低く、あたかもスポンジのような微細なボイドを含んだ構造になっている。クレーズは微細なものであるので、通常は目視でチェックすることは困難である。ただ、ABS樹脂成形品に衝撃力を加えるとクレーズが発生し、白化現象として目視観察できる。ABS樹脂はAS樹脂中にミクロンオーダのブタジエンゴム微粒子が無数に分散しているポリマーアロイ(注)である。このようなABS樹脂成形品に衝撃力を加えると、図2に示すようにゴム微粒子の周囲にクレーズが発生する。

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図2 ABS樹脂のクレーズ

ABS樹脂の衝撃強度が高いのは、クレーズを生成することで衝撃エネルギーを吸収するためである。クレーズ発生部は密度が小さく、クレーズが発生していない部分との密度差があるため白化して見えるので「ストレスホワイトニング」とも呼ばれることもある。
クレーズの中には配向した分子鎖が存在するので破壊に直接的に結び付くわけではない。

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図3 クレーズ発生から破断まで

しかし、図3に示すように、クレーズに応力が作用するとクレーズ中のボイドは大きくなり、次にボイドがつながりクラックに成長する。従って、クレーズはクラックの前駆的現象と考えられる。クラックは空隙であり、しかも先端アールは非常に小さいため応力集中によってクラックは急速に伝播して破壊に至る。

クレーズは微細なものであるので、通常はクレーズの段階において目視でチェックすることは困難である場合が多い。一方、クラックは直接に割れ事故につながるので、発生の有無を目視観察してクラックが発生しないように設計、成形をすることが大切になる。

次回へ続く

注:2種以上のプラスチック(ポリマー)を溶融混錬した材料である。学問的には高分子多成分系材料とされている。

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本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数