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「設計」と「デザイン」って、何が違うの? :初めてプラ製品を作る人に伝えたいこと(3)

2021.05.11

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この記事では…

英語では同じ意味をさすはず(!?)の「設計」と「デザイン」の作業や考え方の違いについて説明します。

(執筆:林光邦/株式会社テクノラボ 代表取締役)

>>前回

「デザイン」と「設計」は何が違うの? 結構多くの方が疑問に思っていることでしょう。英語で設計は「Design」と訳すものの、日本国内においては設計とデザインが異なる作業として区別されることが多いです。

さて、製品の外観を作り上げる作業としては、どちらも良く似ていますが、次の点が違います。「デザイン」は、使う人をイメージしながらカタチを作ります。デザイン作業は、ここで完結です。一方、「設計」はデザインを元にその部品を作る工場に向け、作業手順を図面に翻訳していきます。設計作業はここから始まるのです。

まずは具体的な作業を通して説明しましょう。

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▲設計者を募集する時は、例えばこんな内容になります。

具体的な設計作業

「設計」は「デザイン」が終わってから行われる作業で、通常次のように進みます。

1)デザイン画からCADで設計図面をつくる
2)CADデータから試作品を作り、それを元に、図面を修正する
3)工場と協議して、量産のために図面をさらに修正する
4)量産立上げ中に、状況に応じて図面を修正する
5)製品の品質基準の策定に協力する

以降では、それぞれについて、簡単に説明しましょう。

1)デザイン画から図面を作る作業

設計の最初の仕事は、デザインスケッチを元にCADと呼ばれるソフトで「図面」を作成することです。図面にはデザイン画と異なる次の諸点が加えられています。

・詳細な寸法が、全てに記入されていること
・嵌合等、機能的に成立する構造が検討、反映されていること
・実際に組立ができる構造を有していること
・各部品が量産によって製造できる形状を持つこと

最近はCADが普及して、CADでデザインを作成することも多いのでデザインと設計の境目が希薄になりつつありますが、デザイン画は上記の点すべてを満たしていることはありません。

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▲CADで設計している様子

2)試作品を元に、図面を修正する

次にCADのデータを元に、試作品を作ります。現在では、3Dプリンタなども普及しているので、それで実物(試作品)を作ることが多くなります。そして、実物があると多くの人からフィードバックが生まれますし、組み付けの隙間など図面では気づかなかった不具合にも気づけます。これらを初期図面に反映して、図面を修正していくというわけです。

最初の図面作成段階で、「プロなんでしょ!」、と言わんばかりに、全て正しい図面を作れば良いと思う方もいらっしゃるかも知れません。残念ながら設計者も神さまではないので、全てを予見して完璧な図面を作るのは100%不可能です。

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▲試作の修正

試作品という実物を作った後、それを確認して初期設計の問題点を改良する作業がとても重要です。この工程を経て、最初の図面はより良いものになってゆきます。

3)工場と協議して、量産のために図面を修正する作業

そしてここからがむしろ設計の本番で、量産のために、図面を更に調整・修正してゆく必要があります。

典型的な例として、プラスチック部品の量産を考えます。プラスチック部品の量産では、部品の製造に金型を作る必要があります。金型の製造には幾つものルールがあり、製品図面そのままでは問題があります。例えば製品が金型から取り出せるような「抜き勾配」を加えたり、成形で問題になる厚みの違い(偏肉)を修正したり、厚すぎる部分で起こる凹み(ヒケ)を避けるような形状変更をする、といった修正をして、初めて金型を作ることが出来ます。

またこの段階で、設計は製品のコストダウンも考えなくてはなりません。プラスチック部品の場合、金型は非常に高額なので僅かな設計の違いから生まれる金型の製造費用の違いが、非常に大きくなりがちです。

量産にあたって設計を修正することで全体の費用を減らすことが重要になります。

金型は開発コストの非常に大きな割合を占める事が多く、これが原因で量産がとん挫してしまうことも多いため、設計としては特に注意が必要です。

他にも板金部品やケーブルなど、他の部材でも設計の変更修正によってコストを下げることが出来ることは非常に多くあるため、設計と量産は切り離せない関係にあるのです。

わずかな設計の変更によってコストや品質の問題をくぐり抜けることが出来れば、製品開発の失敗確率を下げることが出来るので、設計は製品開発にとって非常に重要な仕事だと言えます。

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▲金型打ち合せの様子(左)、金型製作の様子(右)

4)量産立上げ中に、状況に応じて図面を修正する作業

量産の立ち上げ時にも設計の出番が多く生じます。全ての部品が出来上がってから組立を始めると、「実際に組み付けが出来ない!」とか、「上手く作動しない!」などといった問題が発生してきます。恐ろしいことですが、これは「日常的に」発生します。

「設計」は最初のデザイン画を図面にする所から携わっているので、問題が発生した場合でもより高所から解決法を提案することができます。部品の精度を見直したり、他の部品で問題をカバーする道を見つけたりすることができるでしょう。あるいはあまりに生産性が悪い場合にも、組立手順を変更したり組立冶具を考案したりして、作業性を向上させていくことも、当初から設計に携わっている人間だからこそ出来る仕事になるわけです。

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▲工場のライン

製造工場の出身者が良く言う、「お前は製造の怖さが分かっていない」というのはコレのことですが、設計が積極的にかかわることで、結構簡単に解決することも多いのです。

5)品質基準の策定に協力する

出来上がった製品が、何をもって「良品」とされるのか、おそらく設計した人間しか分かりません。出荷にあたっては、品質の基準を策定する必要があり、しばしばその判断(製品が機能上問題ないか)は設計の助力が必要になります。

設計作業の重要性

以上に述べたような「設計作業」は、担当が一人で全て行うこともありますし、設計・技術・生産技術・品質保証と何部門かが分担して行うこともあります。ですが「設計」とは製造の最初から最後までを通してかかわる作業であり、製品開発にとって非常に重要な作業であると言えます。

「製品開発の成功は「デザイン」に起因し、製品開発の失敗は「設計」に起因する」

結果としてこのような格言が生まれるわけです。

「デザイン思考」の教科書によれば、製品開発の成功を決めるポイントには「有用性」「実現性」「経済性」の3つがあるそうです。

「有用性」はその製品が消費者にとって役に立つかどうか、という価値で、それを創るのはデザインの仕事です。「実現性」は製品を実際に製品として作ることが出来るかどうか、という価値、そして「経済性」は消費者の求める価格で販売しても利益が出るかどうか、という価値です。後者の2つは設計の仕事であると言えます。デザインと設計は、両社が合わさって製品開発において重要な役割を担っているわけです。

時間軸で考えても「設計」の重要性は際立ちます。デザインは、デザイン画を仕上げる所で作業が完結します。それ以上は原則必要ないのです。対して「設計」は、デザインの終了時からスタートして、そこから最終製品が供給される迄、あるいは量産がスタートした後も、ずっと製品と関わり続けてゆく作業です。

もし設計者に裏切られたら、その時点で製品の開発が困難になるのは明白です。

デザインは確かにとても目立ちますが、一度決まってしまえば終われるという点で、大きな失敗にはつながりづらい。対して「設計」は地味な作業ですが、そこを怠ると確実に失敗につながってしまいます。設計とデザインが、わざわざ分けられている意味を、分かっていただけましたでしょうか?

次回は製品の設計と双璧をなす、電気設計についてです。PlaBaseの趣旨とは少し異なりますが、知っていて損はないので楽しみにしていてください。

(次回へ続く)


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>>>>連載「初めてプラ製品を作る人に伝えたいこと」一覧⁠⁠

林 光邦/(株)テクノラボ代表取締役

⁠東京都立大学3年在学時に実家のプラスチック工場に入社し、そのまま社会人経験をスタートしたものの、数年後に倒産し廃業。その後、創業したばかりの株式会社エヌシーネットワークに入社。同社で工場のプロモーションと業務委託のための工場監査を担当し、300を超える町工場を訪問。

⁠2004年、33歳で株式会社テクノラボを創業。平均年間60~80件程度の製品開発を行う。台湾企業とコラボして作った「foop」、インド製薬企業向けの医療機器開発、国内ベンチャーと協働した3Dホログラム造影端末など、黒子に徹しながら現在も多くの新製品開発に関わる。2018年より海洋ごみのリサイクル事業にも参入。

⁠神奈川ビジネスオーディション最優秀賞など、ビジネスコンペティションの受賞多数。

趣味は、犬の散歩とごみ拾い。