引っ張り試験と、引張応力―ひずみ曲線の読み取り方について解説する。
応力―ひずみ曲線から何が分かるか:プラスチックの強度(13)
2021.05.13この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックの引張試験は、ゆっくりした一定速度で引っ張ったときの荷重Fおよび変形量ΔLを測定し(図1)、次式のように引張応力σと引張ひずみεを求める。試験法は日本産業規格の「JIS K7161」(プラスチック-引張特性の求め方)で規定されている。


このようにして求めた応力σを縦軸に、ひずみεを横軸にプロットした図が「応力―ひずみ曲線」である。応力(Stress)とひずみ(Strain)をS-S曲線と表現することもある。
図2に、鋼のような弾性体とプラスチックのS-S曲線の例を示す。

図2 S-S曲線
弾性体は応力とひずみは比例関係(フックの法則)にあるので点線で示す直線になるが、プラスチックは粘弾性体であるので、応力とひずみは曲線になる。この理由は、ゆっくりした速度で引っ張っている間にポリマー間のずれによる粘性ひずみが発生することによるものである。
弾性体の引張弾性率(ヤング率、縦弾性係数)は直線の勾配として求められるが、プラスチックは直線性を示す範囲が狭いので、2点の微小ひずみに対応する応力から次式で求めている。

S-S曲線では、次のことが分かる。
①縦軸の応力は、大きいものは「強い」ことを表し、小さいものは「弱い」ことを表す。
②横軸のひずみは、大きいものは「粘り強い」ことを表し、小さいものは「脆い」ことを表す。
③曲線の勾配は、急勾配のものは「硬い(たわみにくい)」ことを表し、緩勾配のものは「軟らかい(たわみやすい)」ことを表す。
従って、同一条件で測定されたS-S曲線パターンから各プラスチックのおおよその特性を知ることができる。
図3にS-S曲線パターンとその特性を示す。

図3 S-S曲線パターンと材料特性
JIS規格では引張速度や温度を一定にして測定したときのS-S曲線であるが、条件が変化するとS-S曲線のパターンが変化することも留意すべきである。
図4は引張速度や温度を変えたときのS-S曲線パターンの概念図である。

図4 引張速度、温度とS-S曲線パターン
引張速度が速くなると「硬くて強いがもろい」材料になり、遅くなると「弱いが軟らかく粘り強い」材料になる。また、温度が低いと「硬くて強いが脆い」材料になり、高いと「弱いが軟らかく粘り強い」材料になる。
(次回へ続く)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数


