プラスチックに曲げ荷重をかけた際の強度について解説する。
曲げ強度はどのような強度か:プラスチックの強度(15)
2021.07.06
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
両端支持で中央部に荷重を加えて曲げたときの状態を図1に示す。

図1 曲げ荷重および変形と発生応力
曲げ荷重によって発生する応力は、同図に示すように試験片厚みの中心(中立軸)より上側では圧縮応力が発生し、下側では引張応力が発生する。その場合、上面では最大圧縮応力が、下面では最大引張応力が発生する。プラスチックは圧縮応力より引張応力に弱いので、最大引張応力が発生する試験片下面から降伏または破壊する性質がある。そのため、曲げ試験では試験片が降伏または破壊するときの引張応力を曲げ応力とし、引張ひずみを曲げひずみとしている。曲げ試験法は日本産業規格(JIS ※旧日本工業規格)の「JISK7171(曲げ特性の試験方法)」で規定されている。
曲げ強度は降伏または破断する荷重Fを測定し、次式によって応力を求める。

曲げひずみは降伏または破断するときのたわみδを測定し、次式によってひずみを求める。

曲げ弾性率はフックの弾性限度範囲が狭いため、引張弾性率と同様にS-S曲線の微小ひずみに対応する2点間を結ぶ直線の勾配から次式により求める。

上述のように、曲げ試験における応力やひずみは引張試験と同じであるので、S-S曲線の挙動、引張速度依存性や温度依存性などは引張特性とほぼ同じあるが、曲げ特性に関しては次の点を注意しなければならない。
表1に各種プラスチックについて引張強度と曲げ強度の比較を示す。

表1 引張強度と曲げ強度の比較
同表から分かるように、引張強度に比較して曲げ強度は30M~40MPaほど高い値になっている。このような差が生じる原因は、式(1)及び式(2)は応力とひずみが比例する弾性体を前提にした式であり、プラスチックのような粘弾性体には適用できないことによるものである。
一方、曲げ弾性率はフックの弾性限度内の微小ひずみの範囲で測定しているので、引張弾性率とほぼ同じ値になっている。ただし、結晶性プラスチックの曲げ弾性率がやや低くなっているのは、射出成形された試験片の表面層が急冷により非晶相になっている影響と推定される。
JIS K7171の適用範囲には、次のように記されている。
”曲げ特性は線形の応力―ひずみ挙動を示す材料(弾性体)に対してだけ構造設計用に使用できる。曲げ特性が非線形挙動を示す場合(粘弾性体の場合)、この値は見かけのものとなる。”
(次回へ続く)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

