プラスチック製品の外装や機構の試作について解説します。
製品の試作(プロトタイピング)ってどうやってるの?(その2):初めてプラ製品を作る人に伝えたいこと(6)
2021.07.30
この記事では…
(執筆:林光邦/株式会社テクノラボ 代表取締役)
試作の方法と適した使い方

完ぺきな方法がない以上、ここに挙げたいずれかの方法から望ましい方法を選んで選択しなければなりません。適した試作方法を選ぶ方法を、以下にまとめました。
・展示会などに出品したい(飾り目的)
飾る目的ならば、キレイさが重要で素材の強さは余り問われません。 むしろ速く・安く作れることが重要です。
そのため「光造形」が適した方法です。 光造形のサンプルは磨いて塗装すれば、外観上は量産の製品と較べても遜色ない試作品となり、かつ比較的安価です。
また「インクジェット方式」も美しい表面となりますし、装置によっては着色して作ってくれます。ただ光造形よりはかなり価格が高くなることが多いです。
何れの方法も素材が柔らかく変形したり割れたりし易いので、実際に継続的に使うというよりも展示会等に見せるための一回限りの試作品と割り切るべき方法です。
展示サンプルが多く必要な場合には、最初に光造形等で見本をつくり、それを真空注型でコピーするという方法がお勧めです。 10個~50個くらい作るのであれば他の方法よりは一個あたりの単価が安くなります。
・顧客に渡して評価をしてもらいたい
顧客に使ってもらうためには「壊れない」ことが必要になるので、「CNC切削」や「レーザー焼結」による方法がおすすめです。
「CNC切削」は見た目もきれいで、製品強度も強いので最適な方法ですが光造形やレーザー焼結による試作と比べると、製造コストが高くなるのが難点です。
「レーザー焼結」は製品強度が強く、価格も比較的安価なのですが、見た目がやや汚くなりますので、あくまで動きの検証だけする時におすすめの方法です。
・店頭に並べて販促サンプルとしたい/小量製作して、実際に販売したい
店頭に並べる時には、不特定多数のユーザーに扱われるので量産と同等の材料強度、外観仕上がりが求められますし、それなりの数が必要となります。 広義の意味でつかわれる3Dプリンタによる方法は、いずれも使うことが出来ません。この場合は簡易型などを使って量産に準じる方法で製造をしなくてはなりません。簡易型の種類は製造する数量にもよりますが、100個前後であれば樹脂型、それ以上であればカセット型やアルミ型などが使われています。
試作の後で行うべきこと(製造に関して)
以上、プロダクトの開発としては外装寄りの説明をさせて頂きました。 ただし製造に関しては、当然電気基板やソフトウェアの試作も並行して行われることとなります。
外装が出来上がったのち、それ以外の電気基板やソフトウェアとの擦り合わせは大変重要ですので、特に以下の点などに配慮して、すり合わせを進める必要がある点に留意してください。
①電気基板との干渉チェック
意外に電気部品の寸法はいい加減ですし、部品も事前の報告なく別のものに変えられることが多々あります(コンデンサーやコネクタの変更に注意)。結果としてケースと基板が干渉することは割と日常的です。
②電気配線の引き回しチェック
図面上では問題が無いように見えたものの、実際に組立してみると指が入らなかったりどうやってもぶつかって組立られないことも良くあります。
③組立の作業性
1つだけなら組立できるけど、大量に組み立てるのは余りに生産性が悪いということも試作してみて初めて分かる問題の一つです。
④電池接点・コネクタ等チェック
試作をしてみると電池接点がズレて瞬間停電してしまったり、コネクタがケースの穴の奥に入り込んで挿抜しづらくなったり、機構と電気のはざまで検討が不十分になっている点が見つけられるのも試作の強みです。
⑤CVCCなどの放射ノイズ試験
基板で多い不具合の一つに放射ノイズが規格を上回ってしまうということがあります。
フェライトコアやEMC防御板を追加することが必要になると、当初の外装ケースに収まらないことが頻繁に生じるので、電気評価は試作段階で終わらせることが望ましいと思われます。
⑥通信部分の評価、ソフトウェアの稼働試験の内容検討
最近は通信モジュールを搭載した製品が非常に多いので、完成品も通信の接続テストを行ってから出荷することが多いようです。またアプリとの連携等も確認する必要もあるかも知れません。
通信機能がある製品の出荷前検査は通信接続テストが必須となり、これが意外に大変です。とりわけ外装が大きい製品は検査場所を見つけるのがかなり難しくなります。サブアッシーの小さい状態で検査できるような組立検査体制を、試作段階で検討しておくのが望ましいかも知れません。
今回は、主に外装試作についての概略を説しました。次回は、「素材」についての紹介です。素材はPlaBaseにも大量のデータがあるのですが、そもそも「どうやって選べば良いか分からない」という初心者の方向けに、簡単なまとめをします。
林 光邦/(株)テクノラボ代表取締役
東京都立大学3年在学時に実家のプラスチック工場に入社し、そのまま社会人経験をスタートしたものの、数年後に倒産し廃業。その後、創業したばかりの株式会社エヌシーネットワークに入社。同社で工場のプロモーションと業務委託のための工場監査を担当し、300を超える町工場を訪問。
2004年、33歳で株式会社テクノラボを創業。平均年間60~80件程度の製品開発を行う。台湾企業とコラボして作った「foop」、インド製薬企業向けの医療機器開発、国内ベンチャーと協働した3Dホログラム造影端末など、黒子に徹しながら現在も多くの新製品開発に関わる。2018年より海洋ごみのリサイクル事業にも参入。
神奈川ビジネスオーディション最優秀賞など、ビジネスコンペティションの受賞多数。
趣味は、犬の散歩とごみ拾い。

