プラスチックの疲労強度について解説する。
疲労強度はどのような強度か:プラスチックの強度(19)
2021.09.21
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
疲労破壊は、繰り返し応力を負荷すると、ある繰り返し数に達すると破壊する現象である。疲労破壊強度は繰り返し応力の大きさによって破壊するまでの時間は変化する。
歯車、カムなど繰り返し応力がかかる製品では、疲労強度の高い材料が使用される。疲労試験機の型には「応力振幅一定型」や「ひずみ振幅一定型」があり、種類としては「引張圧縮疲労試験機」「曲げ疲労試験機」「ねじり疲労試験機」などがある。曲げ疲労試験法の例を図1に示す。

図1:曲げ疲労試験装置例
同図のように曲げ応力を繰り返し負荷したときに疲労破壊するまでの繰り返し回数を測定する。試験法は応力(Stress)を変えて疲労破壊するまでの繰り返し数(Number)を測定し、図2に示すS-N曲線を描く。

図2:疲労曲線
日本産業規格「JIS K118(硬質プラスチック材料の疲れ試験方法通則)」では、疲労試験を打ち切る時期には、通常は次の3つがある。
①繰り返し数107回未満で破壊するとき。
②繰り返し数107未満で剛性保持率が一定値まで低下したとき。
③繰り返し数107回までに①、②の条件を満たさなかった場合は107回
プラスチックによって繰り返し応力を負荷するとひずみ軟化と呼ばれる現象があり、剛性(注1)が低下する。剛性保持率とは、最終剛性を初期剛性で除した値の百分率である。ただし、剛性保持率について規格値は示されていない。
疲労破壊の過程はある繰り返し数に達するとクラックが発生し、クラックは繰り返し応力によって次第に成長して破壊に至る。
クリープ破壊ではクラックが発生するとすぐに成長して破断するが、疲労破壊ではクラックが成長し破壊するまでの過程では、図3に示すように、
クラック発生→クラック先端にクレーズ(注2)発生→クレーズの中にボイド発生→ボイドがつながってクラック発生
という繰り返しながら破壊に至るといわれている1)。

図3:疲労試験におけるクラックの成長モデル1)
走査型電子顕微鏡で疲労破壊の進行過程を拡大観察するとクラックが不連続に成長した跡が観察される。この模様をストライエーション(Striation)と称している。
(次回へ続く)
筆者注
注1:次式に示すように、曲げ剛性は曲げ弾性率と断面二次モーメントが関係する。
R=E・I
R:曲げ剛性 E:曲げ弾性率 I:断面二次モーメント
注2:クラックに成長する前段階の現象で、クレーズ中には配向した分子鎖が存在する。
引用文献
1)成澤郁夫 著「プラスチックの強度設計と選び方」、p.126,工業調査会(1986)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
