プラスチックの疲労強度と特性について解説する。
プラスチックの疲労強度にはどのような特性があるか:プラスチックの強度(20)
2021.10.14
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
図1はプラスチックの疲労強度の温度特性概念図である。実用温度範囲においては、温度が高くなると疲労強度は低くなる傾向がある。

図1 疲労強度の温度依存性概念図
引張試験、衝撃試験、クリープ試験などと違い、疲労試験では応力の繰り返しによる発熱で温度上昇することに注意すべきである。疲労試験の過程では繰り返し応力を負荷すると、試験片内部では分子間の摩擦によって発熱し温度上昇する。
金属材料の疲労試験においても発熱はするが熱伝導率が大きいため環境中に放熱するので温度上昇は少ない。しかし、プラスチックは金属に比較して、熱伝導率は1/100~1/300と小さいため放熱しにくいので、試験片の温度が上昇することで熱疲労破壊しやすい。温度上昇には応力の大きさや繰り返し周波数Hzが関係する(Hzは1秒間の応力繰り返し数)。
図2はポリアセタール(POM)の疲労試験における発熱の影響を示している1)。

図2 単軸繰り返し疲労における応力と温度上昇
繰り返し周波数は5Hzの条件である。負荷応力が大きいほど発熱しやすく、熱疲労破壊(図2の「F」)することが分かる。例えば、プラスチック歯車のかみ合い回転試験では、回転数が高くなると歯元温度が上昇して歯元から熱疲労破壊することがある。
プラスチックは繰り返し応力をかけていくとひずみ軟化が起こる。ひずみ軟化の機構は、繰り返し応力の下で試験片の微細構造が変化することによるといわれている2)。非晶性プラスチックでは、変形に応じて分子鎖が少しずつ移動し、全く不規則だった構造がより秩序ある領域とボイドを含むような領域に次第に2相化すると言われている。一方、結晶性プラスチックでは結晶が壊れて小さくなり、非晶相が2相化していくと言われている。
疲労限度とは応力を無限回繰り返しても破壊しない上限応力をいう。S-N曲線が横軸に水平になる応力が疲労限度応力である(図3)。

図3 金属とプラスチックの疲労曲線
一般的に金属材料の疲労では疲労限度が表れるが、プラスチックでは疲労限度を示さず、繰り返し回数とともに疲労強度は低くなる傾向がある。そのため、日本産業規格「JISK7118(硬質プラスチック材料の疲れ試験方法通則)」では、107回で疲労破壊しないとき107回の疲労破壊応力を疲労限度としている。従って、プラスチックの疲労限度応力は107回を超えてもさらに低下することに注意すべきである。
(次回へ続く)
引用文献
1)1)R.J.Crawford,P.P.Benham,Polymer,16,p.908(1975)
2)大石不二夫、成澤郁夫、プラスチック材料の寿命―耐久性と破壊―、p.194~195,日刊工業新聞社(1987)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

