材料強度を考慮した製品設計の考え方について解説する。
材料強度を製品設計に生かすには:プラスチックの強度(21)
2021.12.07
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
強度を高く変形を小さく製品設計するには、強度や弾性率が高いプラスチックを選択することは必要であるが、設計の良し悪しにも左右されることを留意すべきである。金属材料に比較して、プラスチックは強度や弾性率が低いので設計でカバーしなければならない。
次に、図1に示す棒状プラスチック製品に引張力を加える例に基づき、製品設計の考え方を述べる。

図1 棒状製品の一端を固定したときの引張力Fと変形ΔL
[引張強度と製品設計]
引張強度は破壊する応力(MPa)で表される。一方、製品の引張強度は破壊する力(N)であり、この値が大きいほど強い製品である。
引張強度と製品の引張強度(以下製品強度という)は次の関係である。
FB=σB×S (1)
FB:製品強度(N)σB:引張強度(MPa) S:製品断面積(mm²)
従って、製品強度FBを高くするには引張強度σBが高いプラスチックを選ぶとともに、製品設計では断面積Sを大きく設計する必要がある。ただ、図2(B)のように単純に肉厚を厚くして断面積を大きくすると、成形するときにひけ(注1)や気泡(注2)が発生し易くなるのであまり厚くすることはできない。そのため、図2(C、D)に示すように肉厚を厚くせずに幅を広くした形状やH形状に設計して断面積を大きくする設計が適している。

図2 断面積を拡大した例(B,C,D)
ただし、引張強度σBは破壊する応力であるので、破壊しない安全な製品設計をするには安全率を考慮した許容応力をもとに設計しなければならない。このことに関しては、次回の記事で解説する。
[引張弾性率と製品設計]
引張弾性率(MPa)は材料の変形のしにくさを表す値であり、この値が大きいほど変形しにくい材料であることを表す。一方、製品の変形のしにくさは剛性という表現が用いられる。図1において、剛性は次式で表される。

G:剛性(N/mm) F:製品に加える力(N) ΔL:変形(mm)
式(2)から、力Fを加えても変形ΔLが小さいときは剛性Gが大きいことが分かる。
ところで、応力σ=F/S(F:力、S:断面積)、ひずみε=ΔL/L(ΔL:変形、L:力を加える前の長さ)であるから、フックの法則(σ=E×ε)が成り立つと仮定すると次式になる。

E:引張弾性率(MPa)
式(3)を次式に書き換えることができる。

式(4)から、長さLを一定とすれば断面積Sが大きいほど引張剛性G(=F/ΔL)は大きくなることが分かる。従って、弾性率の高いプラスチックを使用し、図2(C,D)に示したように断面積を大きく設計すると変形を小さく設計することができる。
(次回へ続く)
筆者注
注1:成形品表面に発生するくぼみを「ひけ」という。
注2:成形品内部に発生する空洞を「気泡」という。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
