プラスチックの熱分解や熱劣化発生のメカニズムや、酸化防止剤について解説する。
プラスチックと酸化防止剤:プラスチック材料の基礎知識(6)
2021.12.09
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックは熱と空気中の酸素の作用で時間が経過すると熱分解する性質がある。正確には熱酸化分解と言うが、ここでは「熱分解」と表現する。プラスチックの分子構造によって熱分解のしやすさに違いはあるが、図1に示すように進行する。

図1 熱分解機構の概念図
まず、熱の影響で分解の初期物質(ラジカル)が生成する。次にラジカルに酸素が結合して過酸化物を生成する。過酸化物は不安定な物質であるので分解し分子切断が起きる。また、生成した分解物はプラスチックに作用してさらに分解を促進する。
熱分解は温度が高いほど短時間で起きるが、温度が低くても長時間後に起きる性質がある。熱分解した結果、プラスチック製品が変色や強度低下することを熱劣化と称している。
実用的には次のケースで熱分解または熱劣化が起きる。
① 成形時の熱分解
成形機シリンダ内でも酸素が存在するので、高温(成形温度)で滞留している間に熱分解することがある。成形温度が高過ぎる条件や滞留時間が長過ぎる条件では熱分解しやすい。熱分解すると成形品が部分的または全体的に黒褐色に変色する。著しく熱分解すると強度も低下する。
②高温連続使用時の熱劣化
実用温度範囲においても高温で連続使用していると、熱分解が起こり長時間後に熱劣化して変色や強度低下が起きる。熱分解や熱劣化を防止するために添加するのが酸化防止剤である。酸化防止剤を添加しても完全に熱分解を防止することはできないが、ある程度の熱分解抑制効果を期待できるので、成形材料には酸化防止剤が添加されている。一般的に、コンパウンディング工程(注1)で酸化防止剤を成形材料に練り込んでいる。
酸化防止剤には一次酸化防止剤と二次酸化防止剤がある。一次酸化防止剤はラジカル捕捉剤とも呼ばれ、ラジカルを捕捉して分解の進行を停止させるものである。一次酸化防止剤にはフェノール系やアミン系の化合物がある。二次酸化防止剤は過酸化物分解剤とも呼ばれ、過酸化物を分解して無害化するものである。二次酸化防止剤にはイオウ系やリン系の化合物がある。一般的には一次酸化防止剤と二次酸化防止剤を併用して添加することが多い。
酸化防止剤はそれぞれのプラスチックに適したものが選択されている。また、酸化防止剤の添加率が低いと酸化防止効果は低いが、逆に添加率が高過ぎると成形上の不具合が発生しやすくなるので最適な添加率に配合されている。
(次回へ続く)
筆者注
注1:押出機を用いて素材(ポリマー)に配合剤(添加剤、着色剤、充填剤など)を溶融混錬して成形材料(ペレット)を製造する工程をコンパウンディングという。造粒ということもある。
<過去の記事>
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数





