プラスチックの材料強度における、許容応力の求め方について解説する。
許容応力をどのように決めるか:プラスチックの強度(22)
2022.01.11
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックの材料強度は降伏または破壊する応力であるので、強度をもとに製品設計すると実際に使用している時に破壊する危険性がある。一般的に、「機械や構造物の破壊を避け安全を確保するため,設計に際して使用材料に作用してよい上限応力」を「許容応力(または常用応力)」という。強度不具合が発生しないようにするには許容応力をもとに設計しなければならない。
材料強度と安全率から、次式で許容応力が求められる。
許容応力=材料強度÷安全率
材料強度にバラツキがあるが、設計応力(製品に作用する応力)にもバラツキがある。両バラツキを正規分布と仮定する時の概念図を図1に示す。

図1 安全率の概念図
材料強度の平均値をα、設計応力の平均値をβとすると安全率はα/βである。安全率が大きい図1(a)は材料強度バラツキの最小値と設計応力バラツキの最大値の差が大きいため、安全余裕(安全マージン)は大きい。一方、安全率が小さい図(b)は材料強度バラツキの最小値と設計応力バラツキの最大値がクロスするので、使用条件によっては強度不具合が起きる危険性がある。従って、安全率を大きくして強度不具合を起こさないように設計する必要がある。
プラスチック製品の強度設計では、経験的に安全率は2~3程度にすることが多い。例えば、破壊強度を60MPaとすると、安全率2では許容応力は30MPa(=60MPa÷2)、安全率3では許容応力は20MPa(=60MPa÷3)となる。このように安全率を小さくすると許容応力は大きくなるが、強度不具合が起こる危険性はある。一方、安全率を大きくすると許容応力は小さくなるが強度不具合は起りにくくなる。不具合が起こったら手直しすることで対応できる時には安全率は低くてもよいが、大きな危険または損失が生じる時には安全率を大きく設定する必要がある。場合によっては安全率を5に設定することもある。安全率は不具合が発生した時の危険や損失の大きさを考慮して設計者が決めなければならない。
次に、プラスチック製品に要求される強度と対応する材料強度の関係を図2に示す。

図2 製品の要求強度と材料強度
材料強度には静的強度(引張強度、曲げ強度、圧縮強度:注1)、クリープ破壊強度(注2)、疲労破壊強度(注3)などがあるが、同じプラスチックでもこれらの材料強度は異なっているので、それぞれの材料強度をもとにして安全率から許容応力を求めて強度設計しなければならない。
(次回へ続く)
筆者注
注1:ゆっくりした一定速度で変形させた時の破壊強度である。引張強度、曲げ強度、圧縮強度などがある。
注2:一定の応力を負荷して時間が経過した時に破壊する応力がクリープ破壊強度である。
注3:繰り返し応力を負荷した時に破壊する応力が疲労強度である。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

