プラスチック材料における、帯電防止剤の役割や機能について解説する。
プラスチックと帯電防止剤:プラスチック材料の基礎知識(8)
2022.01.13
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックの体積抵抗率は1012~1016Ω・cmと大きいため電気を通さないので帯電しやすい。帯電すると静電気によって次の障害が起きることがある。
①静電気が放電すると引火、爆発、誤作動が起きる。
②静電気ショックや不快感がある。
③塵埃(じんあい)、汚れなどが付着しやすい。
帯電防止するには、帯電防止剤を練り込んだ成形材料を用いる方法と成形品表面に帯電防止剤をコーティングする方法があるが、ここでは前者の成形材料について述べる。
一般的に成形材料に添加する帯電防止剤は界面活性剤系(注1)が使用されている。
図1に示すように、帯電防止剤添加材料を用いた製品では表面近傍に存在する帯電防止剤は水になじみやすい基(親水基)を外側に分子配列して膜を形成している。

図1 界面活性剤系帯電防止剤の帯電防止機構 (引用文献1)
この膜が外気中の湿気を吸着して表面に水分子の多層配列を形成する。水分子膜を通電することで静電気をリークさせている(引用文献1)。製品内部に存在する帯電防止剤は時間の経過とともに表面に移行することで帯電防止効果を持続する。しかし、長期間使用しているとふき取りや水洗によって徐々に失われるので帯電防止効果が持続しないという課題がある。
一方、最近では、高分子系の永久帯電防止剤(注2)を練り込んだ帯電防止材料も開発されている。永久帯電防止剤は、製品内部から表面に移行することはないので、表面近傍に存在する成分だけが帯電防止効果に寄与する。永久帯電防止剤は高分子であるがプラスチックより溶融粘度が低いため、射出成形するときに流動先端に押し出され、結果として表面層に筋状になって多く存在する(図2)。

図2 高分子系永久帯電防止剤の厚み方向の分散状態概念図(引用文献2)
このような効果を表面濃縮効果と称している(引用文献2)。製品の表面層近傍に永久帯電防止剤が多く存在することで帯電防止効果を発揮し、帯電防止効果は持続する。表面濃縮効果を発現させるには、永久帯電防止剤の分散状態を制御する材料技術と成形技術が必要になる。
(次回へ続く)
筆者注
注1:帯電防止剤の種類:界面活性剤:非イオン系、アニオン系、カチオン系、両性
注2:高分子系帯電防止剤:ポリエーテル系、4級アンモニウム塩系、スルホン酸系、ベタイン系
引用文献
引用文献1:芝田正之(本間精一編)、やさしいプラスチック配合剤、P.63、三光出版(2008)
引用文献2:福本忠男、プラスチックス、49(9),p.42~48(1996)
<過去の記事>
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数





