プラスチックの特性について、製品設計における留意点について解説する。
製品設計における留意点は何か:プラスチックの強度(23)
2022.02.17
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
鋼、銅合金、亜鉛合金、アルミ合金などの金属製品をプラスチックに置き換えるには特性の違いを理解する必要がある。
力を加えると変形し、力を除けば元に戻る物体を弾性体という。図1に弾性体とプラスチックの応力―ひずみ曲線(注1)、応力緩和曲線(注2)、クリープ曲線(注3)を示す。

図1 プラスチックと弾性体の特性比較
金属材料は弾性体に近い特性を示すがプラスチックは粘弾性特性(注4)を示す。弾性体は応力とひずみは比例するが、プラスチックは比例する範囲が狭い。そのため、弾性体を前提にした材料力学の考え方をもとに強度計算すると計算誤差が大きくなることを留意しなければならない。
次にプラスチックと鋼を例にした物性比較を表1に示す。
表1 プラスチックと鋼の物性比較例

プラスチックは主に工業部品に使用される汎用エンジニアニアリングプラスチックの非強化およびガラス繊維強化の物性値である。
密度ではプラスチックは鋼の1/7~1/5であり、プラスチック化すると軽量化できることは最大のメリットである。
引張強度は鋼の1/14~1/5であり、ヤング率(引張弾性率)は1/90~1/23である。従って、プラスチックの製品設計では強度や剛性を高くするための設計対策が重要になる。
実用最高温度ではプラスチックは高々100~140℃であるが、鋼は550℃である。特に、プラスチックは温度上昇につれて強度や弾性率が大きく低下することを留意して設計しなければならない。
プラスチックの線膨張係数は鋼の2~6倍大きいので、温度変化に伴う寸法変化が大きいことを留意しなければならない。また金属部品と組み合わせて使用する製品では、温度変化による膨張・収縮差が大きいことに注意しなければならない。
熱伝導率ではプラスチックは鋼の1/170~1/80と小さな値である。つまり、プラスチックは熱を伝えにくい材料である。熱伝導率が低いことは短所にもなるが長所にもなる性質である。例えば、発熱体を内蔵する筐体に使用すると熱が内部にこもるため内部温度が上昇するという短所になる。一方、熱い食品の容器に用いても火傷の心配がないことは長所である。
環境条件による劣化では、鋼は長期間使用していると腐食劣化する。プラスチックは腐食しないが熱、紫外線、放射線、薬品などによって劣化しやすい性質があるので、プラスチックでは材料選定や劣化防止剤の添加によって対策している。
加工法では、鋼製品は主に機械加工やプレス加工で製作されるので加工条件による性能変化は少ない。一方、プラスチックでは、射出成形、押出成形などで成形加工するので、製品の性能は製品設計や成形条件に左右されることに注意しなければならない。
(次回へ続く)
筆者注
注1:引張や曲げ試験における応力とひずみの関係を図に表した曲線
注2:一定のひずみを与えたときの応力または応力残留率と経過時間の関係を図に表した曲線
注3:一定の応力を与えたときの全クリープひずみと経過時間の関係を図に表した曲線
注4:弾性と粘性を示す性質を粘弾性という
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
