プラスチック製品に配合することで、さまざまな特性を付加する充填剤について解説する。
プラスチックと充填材:プラスチック材料の基礎知識(12)
2022.04.13
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
充填材の補強効果は低いが、機能向上、良外観、コスト低減などの目的で配合される固体物質であり、フィラー(Filler)と表現することもある。コンパウンディング工程で溶融樹脂に充填材を分散させて成形材料が作られる。
充填材には、一般に使用されている充填材(以下、充填材という)と熱伝導性を良くするための「熱伝導充填材」、導電性を良くするための「導電充填材」などがある。
充填材
プラスチックに使用する充填材を表1に示す。
表1 充填材

天然の鉱物資源から作られているものが多く、数μmから数10μmの微粉末である。充填材の種類によって効果は異なるが、一般的には次のように性質が改良される。
- 吸水率が低くなるので吸水寸法変化が少なくなる。
- 線膨張係数が小さくなるので温度による寸法変化が少なくなる。
- 繊維強化材と混合して充填することで成形収縮率の異方性(注1)を小さくすることができる。
- 荷重たわみ温度(注2)や弾性率が高くなる。
- 成形サイクルを短縮できる。
- 材料価格が安くなる。
熱伝導充填材
プラスチックの熱伝導率は鋼の1/100~1/300程度であり熱伝導率は低い。そのため発熱源を内蔵するケースやハウジングに使用すると放熱性がよくないため内部温度が上昇する問題点がある。熱伝導性を良くするためグラファイト、窒化ホウ素、アルミナなどの熱伝導充填材をプラスチックに配合すると熱伝導路を形成することで熱伝導性が良くなる。
図1に示すように、熱伝導充填材の配合率を増やしていくと同充填材のクラスタ(導電材がつながったもの)の数が増えていき、ある配合率を超えるとクラスタ同士がつながり熱伝導路(パーコレーション)を形成して熱伝導率が急に高くなる。

図1 熱伝導路の形成概念図
このときの充填材濃度を「パーコレーション濃度」、または「パーコレーション閾値(しきい値)」という。熱伝導充填材の充填率を高くするとパーコレーション濃度に達するが、高濃度になると成形流動性が低下するという課題がある。そのためプラスチックの改質と最適な熱伝導充填材の選択の両面から材料開発が進められている。
導電性充填材
プラスチックの体積抵抗率は10¹⁴~10²⁰Ωcmであり絶縁材料である。しかし、高度な帯電防止が求められる半導体用途や電磁波シールドが求められる電子機器では10⁴Ωcm以下の導電性が求められる。導電充填材にはカーボン系、金属系、金属コーティング系などがある。導電性を発現させる導電路の形成の考え方は上述の熱伝導原理とほぼ同じである。
(次回へ続く)
筆者注
注1:繊維強化材を充填すると流動に平行方向の成形収縮率は小さく、垂直方向は大きくなる。このように方向によって成形収縮率が異なることを異方性という。
注2:熱媒中で試験片に所定の曲げ荷重(両端支持)を与えた状態で熱媒温度を一定速度で昇温し、中央部たわみが指定の値に達したときの熱媒温度を荷重たわみ温度という。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
